The combination of high temperatures and humidity could, within just a century, result in extreme conditions around the Persian Gulf that are intolerable to humans, if climate change continues unabated,"
(このまま温暖化が続けば、高い気温と湿度によって、一世紀以内に、ペルシャ湾周辺では人々が耐えられない厳しい状況になる恐れがある。)
科学誌ネイチャーで発表された論文の一節です。このまま温暖化が進むとすると、2100年には、中東で人が住めなくなるかもしれないと言うのです。
これに関連し、アメリカの研究者は、クウェートやカタールのドーハなどで、気温が60℃に達する恐れがあると推測しています。ちなみにこれまでの最高気温の世界記録は、1913年に米カリフォルニア州・デスバレー(死の谷を意味する)で観測された、56.7℃です。
ペルシャ湾岸に位置する地域では高湿度も加わって、体感温度が75℃まで上昇する可能性も指摘されています。日本人に人気のドバイやアブダビも、観光どころの騒ぎではなくなるかもしれません。
一体、体感温度70度台とはどんな環境でしょうか。
サウジアラビアに住んでいた男性はこう言います。「誰かにホットタオルを強く押し付けられているような暑さ」、そして「汗はすぐ出てきて、メガネをかけると、レンズがすぐ曇る」と。冷房なしには生きていかれない環境です。
しかし、物事には表と裏があるものです。温暖化は、中東などもともと暑い場所にとってはいいことはありませんが、寒すぎて人が住むのに不適だったところには、好影響をもたらす可能性があります。
例えば極寒の地グリーンランドでは、気温の上昇に伴い農業生産が増加、2008年から2012年の間にジャガイモの収穫が2倍に増えたと報告されています。
またアイスランドでは、氷河が溶けて、鉱物の採掘が以前に増して行われ始めています。さらにロシアのシベリアでは、永久凍土が溶け、ダイヤモンドや金などの採掘も盛んになっているようです。その他にも北極圏の氷が解けて北海航路ができ、貿易が盛んになる、渡航が容易になることで、観光産業が盛んになることなどが期待されています。
日本ではどうでしょう。
ゲリラ豪雨が多発して洪水リスクが高まる、西日本などでは米の収穫量が減少したりするなどの問題が懸念されています。しかし一方で、特に北日本では農業の栽培期間が長くなる、以前作れなかった作物が作られるようになるなど、好影響もあるでしょう。IPCCも温暖化は不可避のところまで来ていると指摘しています。今後私たちは、来るべき温暖化に順応する道を探る必要があるのです。