「遺産は全て長女に相続させる!」
遺言者Aさん(78歳)には二人の娘さんがいます。
長女の花子さん(48歳)と次女梅子さん(45歳)。お二人とも結婚時まで両親と暮らした実家を出て家庭を持っています。
「遺産は全て長女に相続させる!」
Aさんの遺した遺言書には、「長女の花子さんに自宅と預貯金、株式を相続させる。」
とあり、次女梅子さんには何も書かれていません。
これ、よくある 相続トラブル なんです。
もともと、花子さんと梅子さんは仲のいい姉妹でした。
Aさんも奥さんと共に、分け隔てなくこの姉妹に愛情を注いで育ててきました。
この仲の良い姉妹がギクシャクしだしたのは5年前から。
母親の疾病、そして他界後からです。
これには、次女梅子の家庭で交わされる夫(徳太郎)の言葉が色濃く影響しています。
「梅子!お前の母さんが亡くなるまで、毎日介護したのはお前だろ。花子姉さんはやってないだろ。その分、お父さんの遺産相続では、多く貰わないと損だぞ‥。」
実のところ、姉妹間では親の遺産分割の損得なんて考えていなかったのです。
久しぶりに会う姉と妹は、互いの幼い日の想い出話に興じる事もありました。
ところが‥‥‥
「お父さん!お母さんの介護を最後までしたのは梅子ですよね。
それに花子姉さんは自宅を建てた時に、お父さんから資金援助してもらったらしいですね。このままじゃ不公平じゃないですか? 次の相続では考えてやってくださいよ‥‥。」
昨年の正月、年始の挨拶に実家の父親を訪ねた梅子と徳太郎夫婦。おせち料理を前に、徳太郎はAさんにこう告げたのです。
この言葉に父親Aさんは激怒したのでした。
「親の遺産に口を挿むのか!そんな奴の処に相続させるものはない!」
法的には梅子さんに法定相続分の1/2にあたる遺留分があります。
この遺留分は例え遺言書でも無視することは出来ない相続人の権利なのです。
ですので、梅子さんは花子さんに対して遺留分侵害額返金請求をすることが可能です。
かつては仲の良かった姉妹です。
ですが、姉妹間で法的な金銭請求トラブルになれば、おそらく元には戻れないしこりを残してしまう事でしょう。
良かれと考えた第三者の一言。それに込められた損得計算。
これが親子間の関係を 相続トラブル に導く例が多くあるのです。