〝親の終活”と家族の負担

 

「あなた‥! また警察から電話ですよ!」

 

宮本宏さん(仮名)が仕事から帰り、夕食のテーブルに着いたその時、妻が声をかけます。

「夜分に恐れいります。こちらは〇〇〇警察の生活安全課です。実は今日の19時過ぎ宮本一郎さま(仮名)がコンビニで万引きをされまして、署内で身柄を確保しております。」

 

「えっ!。はい、申し訳ありません。宮本一郎は私の父親に間違いありません。直ぐに参ります。」

 

受話器を置くと玄関先に飛び出した宮本さんでした。

 

実は父親が万引きでの警察に留置されたのは、今日が初めてではありません。

 

10日余り前にも同様の連絡が警察からあり、動転しながら身柄引き取りに車を飛ばしたのです。
 

警察からの連絡があった翌日、宮本香さん(宮本宏さんの奥さま)は会社を休めない夫、宏さんに代わって父親が万引きをしたコンビニへ。

 

「この度は本当に申し訳ありません。最近、認知症みたいで‥。こんなことをする人ではなかったのですが‥」

宮本香さんはコンビニの店長に、深々と頭を下げ謝罪します。

 

「認知症でも万引きは犯罪ですよ!防犯カメラ見ますか?身内の人がしっかりしてもらわないと困りますよ。」

 

「それとね。警察にも言いましたけど、売上げと在庫を確認したら20万円近くのマイナスなんですよ!あんたの父親、毎日と言って良いほど来てましたからね!」

 

「親に代わって20万円を支払ってほしい…」と暗に諭す店長でした。

 

 ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆

 

高齢者によって〝繰り返される万引き” が頻発しているとの報道も目にします。

上記は実際にあった父親の万引き事件を一部修正したものです。

 

父親の宮本一郎さん(仮名)は大手メーカーの部長職を最後に定年退職。

 

 

現役時代は部下や上司の人望も厚く温厚な人柄でした。

間違っても万引き等不正な行為をする人ではありませんでした。

 

退職後は、嘱託非常勤で関連会社で働いていましたが、2年前に奥さまを亡くされ、以後は仕事も辞め一人で暮らしておられます。

 

奥さまを亡くされてからの一人暮らし。これといった趣味もない宮本さんです。何を楽しみに過ごしておられたのでしょうか?

 

宮本一郎さんにお子さんは二人。その子供達もそれぞれ家庭があります。亡き母親の葬儀後は次第に疎遠になり、気になりながらも実家を訪ねる事はありませんでした。お正月に顔を会す以外ほとんど無かったのです。

 

かつては家族団欒で笑い声に満ちた居間。今は足の踏み場もなく古新聞や雑誌、買い物袋が散乱しています。

 

事件から数日後、宮本宏さんは奥さまと一緒に地域包括支援センターを訪れました。

万引きをした父親について包み隠さず相談。対応してくれた職員から今後の対処についてアドバイスを受けたのです。

 

現在、父親は要介護認定され、週に数回施設に通っておられます。

 

宮本宏さん夫婦は香さんが中心に、父親の身の回りの世話をされています。実家での同居も考えましたが、今は子どもの受験期。同居は見送り、通いで世話をすることにされました。

朝9時前、香さんは週に数回、施設への送迎バスを見送られます。その後、実家での洗濯や掃除といった家事が待っています。パート勤務はとても続けられないので辞められたのです。

 

香さんがする世話の甲斐があり、それ以後、父親は万引き等の困った事件は起こさなくなられたとの事です。

 

それにしても、財布の中には2~3万円を持ちながらの万引き行為。

店員の目を盗んでポケットにいれるのは、亡き妻が生前好んで飲んだカップ酒

 

こんな事実を知ると、虚しくなってしまいますね。

 

 ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆

 

 

〝孤独感・他人との交流がない・変化の無い日々の繰り返し・顔を見せない子供達”

 

今回の事件は上記の要因が積み重なりから、認知症へと進む例です。

何より家族間のコミュニケーションが必要と考えさせられますね。

 

  

「俺はまだまだ大丈夫。しっかりしているだろ‥。終活なんてもっともっと先の話だよ‥‥」

 

家族の言葉に耳を貸さず、自分の老後に向き合わない親が多くおられます。

でも、「親と子が老後について話し合っておくこと」

 

これ親の安全安心な老後生活・子の負担減少欠かせないのです。

 

〝自分の終活”と〝子にとって親の介護” 「老い」は誰にでも訪れる人にとって自然なことです。互いに向き合って取り組んで行くことが大切です。


 

 

「親の終活 どうする?」

お気軽に無料相談会にお越しください。出張相談も可能です