しかしトレーダーなら誰でもよいというわけではない。専門分野でしっかりした実績をあげた人材でなければ求人されていない。だからこそ、優秀で実績のあるトレーダーには多くのオファーが集まり、争奪戦になっているのだ。それにともない移籍金も上昇して、年収1億円というケースも見られるようだ。
争奪戦は米国に限らず、欧州でも盛んになっている。欧州市場の中心地、ロンドンシティでも、多額の移籍金でライバル社の社員を奪い合うケースも出てきている。
例えば、英国の大手銀行バークレイズが、同業他社から5人のトレーダーを引き抜く際に、現金と株式を合わせて約45億円(3000万ポンド)の契約金を提示したという情報が流れている。
この移籍を持ちかけられているのは、凄腕コモディティ・トレーダーのJPモルガンのT・エドガー氏とそのチームで、彼は昨年ひとりで、JPモルガンに6000万ポンドに上る利益をもたらしたとされている。
一方、彼の所属するJPモルガン側も優秀な社員を手放すつもりはなく、引き留めに多額の報酬アップを約束しているようだ。いずれにしても、同氏の移籍をめぐる金額は、英国で金融危機が深刻化して以来、最高額になるだろうと噂されている。
このように世の中不況、不況と騒いでいる間に、ある特定の分野ではV字回復しつつある。そして、彼らの顧客となりうるのは、投資資金を麗澤に有する機関投資家や富裕層なのである。そうして、V字回復からバブル再来の恩恵が再び、富裕層にもたらされることになる。