前回のブログでは、経済発展の過程で、

産業の重心が農業から工業へと移って

いく理由について考えた。

今回は、

―そもそも農業と工業の違いとは?―

について、基本的な内容を

以下の5点にまとめてみた。

 

①家族か組織か

農業は、家族によって営まれることが

多い。対して工業は、工場で、不特定

多数の労働者によって営まれるのが

一般的である。

では、なぜ農業は、企業化できない

のだろうか。

その主な理由として、生産現場の

空間的特徴が挙げられる。

広大な農地で作業する人々が、

しっかり働いているかどうかを監視

することは、工場に比べて非常に

難しい。すなわち、簡単に、サボる

人が生じてしまうのである。

だからこそ、「家族」という信頼関係で

結ばれた場合にのみ、経営を管理

することができると考えられる。

 

②腐るものと腐らないもの

農産物と工業製品の、財の性質に

おける最も大きな違いは、

「腐る」か「腐らない」かと言えよう。

この違いは、流通に大きく関係する。

「腐る」農産物は、財としての寿命が

短い。従って、特に葉物野菜や肉・魚

は、瞬時に流通させる必要がある。

マグロの「競り」が行われるような、

中央卸売市場が、工業製品の世界

では、存在しないことからも

納得いただけるだろう。

 

③天候リスク

天候不順の影響を受けるか

受けないかである。

工場のように、しっかりとした屋根が

ある場所では、台風が来ようと、

部品の調達が滞る等のケースは

あるが、大きな被害は出にくい。

しかし、農産物にとっては甚大な

被害が出てしまう。

人の力が及ばぬ天候リスクと

向き合わなければならないのが、

農業という産業部門の特徴である。

 

④生産かかる時間

工業製品は種類にもよるが、

農産物に比べ、製品が完成する

までに要する時間が短い。

農産物、例えば米は、

播種→育苗→移植→収獲までに

半年以上を要する。

牛肉については、

出生→子牛育成→肥育→屠殺

までに、2年半程度かかる。

この間に、農産物価格や、

農業生産資材(肥料や農薬)の

価格は上下したりするので、

採算割れのリスクに晒されやすい

という特徴がある。

 

⑤食べ物か否か

最後に、当たり前だが、農業と

工業の生産物の大きな違いは、

「食べる」か「食べないか」である。

食べる場合、人体に対し、容易に

影響を及ぼす。

すなわち、健康被害が工業製品

に比べ、より直接的に生じるので

ある。

こうした衛生上のリスクの高さは、

農業において特にみられるもの

である。

 

ここまで見てきたように、

農業と工業では、リスクの種類や

構造が大きく異なる。

農業は、第一次産業に含まれ、

産業の一部門として位置付けられ

ているが、その構造や特徴は、

「リスク」という観点で見てみると、

他産業と同一平面上では議論が

難しいと言えるだろう。

 

最後に、農業のなかでも、

品目別にみるとリスクが異なる。

前々回のブログに戻り、

「米」と「魚」を比較してみよう。

米における代表的なリスクに、

洪水被害が挙げられる。

しかし、例えば農地を分散させて

所有したり、堤防をより堅固なものと

することにより、ある程度、被害を

緩和することができる。

ただし、魚については、

「レジームシフト」と呼ばれる現象が

ある。

それは、海水温の変化などにより、

水産資源(魚や貝)の生息状況が、

突如にして激変してしまうことである。

今まで魚が居たのに、今年は全く

居ない、ということが起こり得るので

ある。

このような点からも、

稲作という部門は水産に比べ、

安定的と考えられる。

前々回のブログで、魚はタンパク質で

あることが重要と書いたが、魚と同じ

「タンパク源」である肉についても、

狂牛病の蔓延など、

突如として生産者の経営資源

(牛や豚)が無くなってしまうリスクは

付きまとっている。

前に述べたタンパク質の商業性は、

リスクプレミアムと表裏一体なのである。