今回は、筆力の増やし方についてです。


自分は、完全に克服できたわけではないのですが、自分のとった筆力増強の対策を紹介したいと思います。


 
1 筆力について



 司法試験では,正解筋にのった一定の分量の答案を書く必要があります。
 よく,司法試験の答案は、「分量ではなく,内容だ」といわれます。これは、一面において正しく、一面において間違っていると思います。確かに,正解筋から離れた内容を8枚書いても,全く点数になりませんし、正解筋をなぞった3枚答案には勝てません。しかし,これは,正解筋を書きそろえるかの段階で,差がつく問題で生じるものです。民事系や,現場思考問題などでは,問題の所在を押さえてそれなりの記述ができるかで勝負が決まりますので,その意味では「分量ではなく、内容だ」という意見は正しいです。


一方で,司法試験の刑事系などでは,正解筋をとらえることが難しくない問題も多く存在しています。こういった問題では,ほとんどの人が検討事項自体は押さえてくるので,問題の所在を押さえるだけでは,合格点に載りません。そういう問題の場合は,規範の精度,事実適示・評価の精度などの記述の丁寧さで差がつくので,筆力がものを言ってくるのです。   
これは誰かが言っていた言葉の受け売りなのですが,「必要なことを,必要な分量で書く」ことで、初めて合格点にのる問題も司法試験には多く出題されることになります。なので,司法試験では,答案を早く,たくさん書く力は非常に重要であり、合否を左右する要素になります。




2 2年目の不合格の原因

 僕は,答案が絶望的に書けなくて,民事系と行政法では,4枚程度、刑事系と憲法では5枚程度しか,1年目は答案が書けませんでした。そこで,2年目は,知識をつけるとともに,筆力を増やそうと思って、いろいろと試しましたたが,3か月間くらい答練の時に、いろいろ試しても、分量が伸びなかったので、分量を書くセンスがない割り切って、少ない分量で、ポイントついた答案を書いて受かるという方針に切り替えました。しかし、結論から言ってこの方針は失敗だったと思います。それは,刑事系のようなみんながある程度かける問題では,分量を書かないと点数が出ないからです。結果として,2年目は、知識が増えているのに、刑事系の点数が全くのびず、また公法で大失敗をして落ちました。
 2年目で不合格になって、ようやく筆力という問題を根治する必要があると悟りました。




3 原因
 筆力がでない原因ですが、結論から言ってしまうと、複合的要因としかいいようなく、原因の一つをつぶしたからといって、簡単に治るようなものではありません。ただし、多くの場合は、以下のようなものに集約されるように思います。



①答案構成の時間が長すぎる

②答案構成用紙と問題を行ったり来たりする

③最初の1枚目を必要以上に丁寧に書く

④書きながら考えてしまい途中で止まる

⑤知識不足、お決まりの論証を現場で考えている

⑥そもそもの文章を頭からひねり出す速度が遅い



自分としては,2年目については、短答の成績も伸び知識が2年目には、安定していたので、知識不足だけが原因ではありませんでした。自分としては、①~⑥について、どれも筆力の阻害要因でしたので、できる限りそれぞれの欠点をつぶすように心がけていきました。



4 対策


 では、筆力が低い原因因子をつぶすためにどのような対策をとればよいのでしょうか。自分がやった対策を紹介してみたいと思います。


(1)①②に対する対策


①答案構成の時間が長すぎる
②答案構成用紙と問題を行ったり来たりする


この2点は,答案作成前の段階でのロスということになります。答案構成に時間をかけすぎたり、問題と答案構成用紙を行ったり来たりするので,時間をロスして,結果として答案を書く時間が短くなり、書くことができる答案の分量が減ってしまいます。
このようなロスを減らすために、僕は答案構成用紙を使わないという方法を採用しました。この方法は、最近多くの合格者の方がブログなどで発信されているのですが、昔からこの方法はあったようです。僕も最後の年は、憲法、刑法以外の科目で、答案構成を問題の余白で、できるだけ少ない分量でするように心がけました。
この方法をとると、そもそも答案構成の量がへるので、答案を書くのに時間を使えます。また答案構成用紙に目をやる必要がないので、抜き出す事実が問題文上の答案構成の横にいつも視界に入っていて、ロスが少なかったです。
この方法で、かなり分量が増えたように思います。



(2)③④に対する対策


③最初の1枚目を必要以上に丁寧に書く
④書きながら考えてしまい途中で止まる



 まず、③についてですが、最初の1枚目できれいな文字で書いているのに、最後の方は結構雑な文字で早く書いているというのはあるのではないでしょうか。実際、答案の最後の方で早く書けるのであれば、最初からその速度を出すことも可能なはずなのです。なので、最初の方からトップスピードで答案をかければ、分量も増えてきます。

 次に、④については、書いている途中で、もたつくことです。途中で書くのが止まって、1、2分使うと、書く時間が少なくなって、分量が減ってしまいます。なので、できるだけ、最初の答案構成の段階で迷いのない程度まで、構成を詰めて、書き始めたら、止まらずに一気に書ききる必要があります。

これらの欠点は、要は答案を書く段階でのろのろしてしまう癖であるので、試験中にこの癖が発言しないように、訓練する必要があります。

僕も、この癖のせいでかなり答案が減っていたので、3年目はこの癖が発言しないように、答練を通して強制していきました。具体的には,答練の際に、毎回答案構成の時間と、1枚当たりの記載時間を記録して、どこでロスが生じたのかを突き詰めていきました。初めのうちは、最初の1枚目で、20分かけたり、途中で止まって1枚20分近くになったりと、散々な状況でしたが、時間を逐一記録していく中で、早く書くという意識が体に刷り込まれて、少しずつ早く書けるようになりました。
その経過については、ブログの目次の論文パーフェクト答練という項目の過去記事をみれば、確認できると思うので、興味のある方は確認してみてください。




(3)⑤知識不足に対する対策


これは、要はたくさん勉強して知識をつけろということなのですが、知識のつけ方にも注意が必要なように思います。
 基本書を読んでいれば、論点や法概念自体の知識がつき、短答のスコアは上がると思いますが、その知識が論文に直ちに生きるかといえば、別問題なように思います。知識を入れる段階から、論文を意識していく必要があると思います。
 知識を入れる段階から、論文だったらどのような流れで書いていくのかを確認していくことが大事です。短答の肢をきるだけに必要な分の知識をいれるだけだと、答案を書く段階で、その知識を使ってゼロから答案で説明できる形で組み上げなければならず、時間をロスします。
 自分でインプットするときに論文のフローを確認するというのも非常に有効ですが、いちいち自分で論文のフローを組んでいくと時間がかなりかかります。そこで、理解不十分な論文知識があったら、僕は、工藤先生の論証集を使って、書き方の流れをチェックして、覚えるようにしました。このインプット時におけるひと手間が、現場での答案構成の量をへらしてくれ、結果として分量を増やすのに役立つと思います。



(4)⑥に対する対策



 ⑥そもそもの文章を頭からひねり出す速度が遅い



残念ながら、この要素は、受験生のセンスによるところが大きいと思います。初めから文章を書くのが早い人というのがいて、早い人は細かいことを考えなくても、60分とかでも8枚答案を書けてしまったりするようです。僕は、昔から文章を書くのが遅いので、かなり苦労しました。
 文章の放出スピードは、センスに多く左右されるのですが、僕の感覚としては、答案をたくさん書くようにすれば、多少は早く文章が頭からひねり出せるようになると思います。答案の分量が少ない人は、年明けからの起案の分量を増やしてみる、さらに4月以降は、もっと書く分量を増やしてみるといった手段をとってみるのもよいかもしれません。