1 はじめに
今回は、短答得点戦術の2回目です。前回は、短答の日常の勉強のコツを書きましたが、今回は司法試験直前期の知識の入れ方について説明しようと思います。
直前期といっても、人によっていつからかというとらえ方は違うとおもいますが、ここでは全国模試のあとの一月、具体的には4月~本試験前をここではイメージしてもらいたいと思います。
2 直前期にいれるべき知識の性質
試験前の一か月間については、特に復習しなくても、憶えたことを司法試験で使える思います。また、完全に理解ができていない知識についても、ある程度丸暗記して、本試験で使える期間だとお思います(あくまで短答に限定した話です。理解していない知識は論文ではつかえないので)。
このように、直前期は司法試験までに時間が近いという性質上、理解とか言う前に、とにかく憶えるしかない知識すなわち、短答プロパーの知識を詰め込む期間とするのが理にかなっています。そこで、この時期は、今までにチェック済みだった知識を一気に暗記することが中心になります。
ここでいう短答プロパーの多くは、具体的には条文知識です。判例の知識は、論文の勉強で使う上に、理解して何ぼなので、直前期に新しく詰めるようなものではないと思います。そこで、普段から直前期に一気に見直すことを意識して、短答プロパーの条文知識にチェックを入れておく必要があります。これは、普段過去問を解いたり、模試を受けたときに間違えたプロパーの知識を判例六法にチェックしておくことで、直前期に見直すステキな資料が自然に出来上がります。こうやって、なかなか憶えられない苦手な知識を選別していくと、直前期に条文の数を減らすことができます。確かに、チェックしたもの以外からも出ますが、まずは自分が今まで間違えたものを中心に精度の高い知識を習得することことを目指すのが、短答で効率よく得点する鍵です。
(判例六法の短答プロパーの箇所に付箋をつけて、すぐにチェックできるようにしました。)
(短答プロパーの知識は、蛍光ピンクで小見出しを塗って直前期に見直せるようにしています。紫の蛍光ペンは、論文で書く可能性のある条文の小見出しを塗っています。紫については、条数を思い出せるくらいに習得度を高めておくと、論文試験の際に条文を探す手間が省けます。)
3.短答プロパーの埋蔵箇所
短答については、短答プロパーの知識がたくさん出る分野があります。
それは、憲法と刑訴(あと、親族相続)です。これらの分野は、短答でしか聞かれない知識が多く聞かれます。
直前期はここに絞って学習するのが、非常に効率がいいです。あと、会社民訴にも、短答プロパーの条文問題はでますが、会社民訴よりも憲法と刑訴を優先するべきです。
理由は、2つあります。
まず第一に、会社と民訴は、それぞれ38点しか配点がありませんが、刑訴、憲法は50点あります。配点が多いところを重点的に勉強するのが効率的です。
第二に、刑訴と憲法の出題形式の特殊性が、これらを優先するべき理由になります。会社、民訴は、正しい組み合わせを選ぶ問題がでます。これは、5肢ある中で、2つくらい、絶対正解できる知識があれば、問題自体も多くの場合正解できます。しかし、憲法は、3肢8択問題という、3肢すべてを正解しなけばならない問題がでるので、民事系より高い知識の精度が問われます。また刑訴は、部分点がない問題がでることがあり、完全正解できなければ、点数がのびません。
以上の理由から、直前期には、憲法刑訴を最優先するべきです。
ちなみに、僕は今年、この方法を採用して、点数を多く伸ばすことができました。
直前模試の時には、憲法統治、刑訴の短答は放置していたのですが、直前模試のあとこの分野に時間的リソースを集中的に投下して、一気に得点を伸ばすことができました。模試で、これらの分野ができないのは想定内でしたし、結果として本試験で戦略通りに、これらの分野で点数を伸ばせたので、良かったです。
LEC ファイナル模試短答 2014・3月
公法 62(22・40)
民事 117(55・24・38)
刑事 60(33・27)
総合 239 (平均218)
平成26年司法試験短答
公法 72(38・34)
民事 119(56・30・33)
刑事 79(42・37)
総合 270(平均218、合格者平均243) 612/8015
なお、平成27年の司法試験から、短答が憲・民法・刑法に試験科目が限定されることが決まっています。したがって、上記の戦術はそのままでは来年は使えないものになりました。しかし、配点の大きな短答プロパー分野に、直前期の時間的リソースを集中する戦術同様に使えると思います。どの分野にリソースを集中させるべきかは、来年の試験の傾向を見なければわからないわけですが、少なくとも、来年も試験範囲である憲法(とくに統治)については今年までと同様に、集中的に力を投下して間違えないです。刑訴がなくなるので、僕だったらその分の力を、家族法の条文や、刑法総論の細かい条文知識(刑の種類とか)に代わりにエネルギーを使うと思います。
4. 痛いけど目に入れる
直前期は、とにかくスピード感をもって、知識に触れることが重要です。いままで、一度習得した知識は、目に入れさえすれば、なんとなく憶えているものです。論文で書ける程度ではなくても、短答の肢を切るくらいには、目にいれるだけでいけるものです。
正確に言えば、直前期の前半は少しだけ、時間をかけて読むが、本試験直近の時期は、ひたすら目に入れる感じです。一度思い出しておけば、見るだけで記憶は保持できます。また、思い出していなくても、試験の直前に目に入れておけば、火事場のバカちから的な現象が起こって、問題解いているときにその知識を思い出せることがあります。
僕は、今年は4月の後半くらいから民法、憲法、行政(行訴、行手)、会社のチェックした箇所を一回読み、論文試験終了後の最後の一日に、憲法、行政、刑訴、刑法の条文をもう一度読みました。
さらに、短答試験試験当日も、憲法、行政、刑訴、刑法を再度読みました。このあたりなると、一つの法律を10~30分程度でチェックできるようになります。憶えていない箇所を見るだけだけだからです。
民事系が終わった後の休み時間に、憲法、行政法(行訴、行服、行手、情報公開)の条文を、鉛筆で線を引きながら、読みました。使わない昔の司法試験六法から、読む法律だけ切り取って、本試験会場で1回読んだらゴミ箱に捨ててました。公法系が終わった後も、ひたすら鉛筆で、なぞりながら目に入れていました。そして、刑法、刑訴を読み、読み終わった法律はゴミ箱に捨てました。
このゴミ箱に捨てる行為は、自分としては終わったことには振り返らないという暗示を自分にかけることになり、精神衛生上良い効果がありました。
この目に入れるという行為は、場合によっては結構結構きついことがあります。孫は目に入れても痛くないといいますが、条文知識は憶えないことを思い出して凹むので、目に入れると痛いです。特に論文終了後の最後に一日は、条文を目に入れるとできなかった論文でできなかった箇所を思い出して、凹みすぎて目が潰れそうになります。しかし、司法試験が終われば痛いのは治るので、気にせず目に入れてしまいたいところです。