第1 設問1(以下特記なき限り条数は破産法を示す。)
1小問(1)
(1)まず、本問でXD間の契約は請負(民法632条)であり、Xが注文者、Dが請負人にあたる。この場合の解除の法的根拠を検討する。
 民法642条1項は、「注文者」が「破産手続開始決定」を受けた場合につき、請負人を報酬の支払いを受けられない状態のまま、契約に拘束することが不当であることから、53条の特則として注文者・請負人に双方に解除権を与えている。
 本件では、破産手続き開始決定を受けたXは、同条に基づき、契約を解除することになる。
(2)解除後の法律関係について
 解除後においては、契約は遡及的に無効となり、原状回復義務が生じるのが原則である。しかし、請負契約を解除した場合に、既履行部分についてまで、原状回復できるとすることは、法的安定性を害する。そこで、請負契約の解除の場合の原状回復については、出来方部分は、解除の対象とならず、未履行部分のみが解除によって遡及的に消滅する。
(3)Dの請負代金請求権の行使の方法
 出来方を除外した部分について未払いの請負代金債権は、代金総額の15%にあたる9000万円である。この債権については、「破産手続き開始決定前の原因」から生じたものであり、破産債権にあたる(2条5項)。そこで、Dは破産債権者としてXの破産手続きにおいて権利行使することになる。
2小問(2)
(1)本件でDX間の請負契約では、Dが仕事完成義務を負担し、Xが報酬支払い義務を負担している。この場合DとXが「共にまだ履行を完成していないとき」にあたる。そこで、Yは53条1項に基づき履行を選択したと考えられる。
(2)破産手続き開始後の請負代金債権について
 破産管財人が履行を選択した場合の相手方の請求権については、財団債権となる(148条1項7号)ため、Dは財団債権者として破産手続き外で優先弁済をうけることができる(151条)。
(3)未払いの9000万円について
 9000万円については、破産手続き開始決定前の原因に基づくため、破産債権となる(2条5項)とも思える。
 もっとも、この場合請負契約の履行は全体として不可分であるため、一部が財団債権が財団債権となる事態が生じるのは不都合であるから9000万円についても財団債権になるというべきである。
 よって、Dは財団債権者として権利行使する。
2設問2
1小問(1)
(1)まず、AX間の請負契約についても「共に履行まだ履行を完成していない」場合に当たるため、Yは53条1項に基づき解除したものである。
(2)この場合、反対給付たる5000万円については、財団債権となる(54条2項後段)。
2小問(2)
(1)本件では、B銀行は連帯保証契約の履行として、5000万円について自ら弁済した(104条の要件も満たしている)。この場合、もとのAの権利が財団債権であるから、Xに対して財団債権者として権利行使できないか。
 ここで、求償権者は弁済による代位による取得した債権が財団債権である場合には、その債権を行使することができるというべきである。なぜなら、そもそも破産財団については、財団債権者が権利行使することが予定されていたのだから、求償権者の財団債権者の権利行使を認めても破産財団を害することにはならないからである。
 本件では、BはYに対して財団債権者として権利行使できる。
                           以上

再現日 平成25年5月23日  2,75枚
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