第1 設問1(以下特記なき限り民事再生法を示す)
1A社としては、B社との協議の機会を確保するため、担保権消滅請求を申し立てることが考えられる(148条1項)。これは、後述するように本件リース契約の当事者B社は担保権者に当たるところ、B社の担保権実行を阻止する交渉の手段として、担保権の消滅させることが有効だからである。そこで、Bが担保権者に当たる点、担保権実行申立てが可能な点につき検討する。
2本件リース契約の性質
まず、本件リース契約の性質については、本件設備の利用権を担保権目的物とした担保権の設定であるというべきである。なぜなら、フルペイアウトファイナンスリースについては、貸主が目的物物件の使用料相当額について金融をしていると考えることができるからである。
3では、担保権消滅請求は可能か。その申立ての要件につき検討する。
(1)申立てのためには、担保権の目的物が「債務者の事業の継続に欠くことができない」ことが必要である。
 本件では、本件設備はA社の事業の継続に不可欠な設備であり、B社以外のものと契約を締結することによって同等の設備を調達することは不可能であった。そうすると、そのようなA社の事業にとって不可欠な本件設備の利用権についても、A社の事業の継続のためには不可欠なので、Aの事業の継続に欠くことができないといえる。
(2)よって、A社は、担保権消滅請求の申立てができる。
4 審理の方法に関する問題点
 担保権消滅許可決定がなされた場合、担保権者たるBは即時抗告することになる(148条4項)。この場合、即時抗告の場においては本件設備を継続的に使用する点についての協議ができないという問題点がある。
5既に解除権を行使していた場合
 解除権の行使は、本件リース契約を担保権と捉えると、担保権の実行にあたる。解除権の行使については、リース料の不払い1回で解除できる旨の解除の約定に基づくものと考えられる。この約定は、倒産を条件に解除権が発生するいわゆる倒産解除条項とは異なるため、民事再生法の趣旨から無効とされることはない。したがって、特約に基づく解除は可能である。解除した場合、担保権は消滅するため、上記の担保権消滅請求は利用することができなくなる。
そして解除した場合、破産手続き開始の時点で、利用権は解除によって消滅するため、Bは本件設備の所有権に基づき、取戻権(53条1項)の行使としてAに本件設備の返還請求権をすることになる。
第2 設問2
1本件では、可決された再生計画案において、事業をCに譲渡することが定められていた。しかし、C社代表取締役Dは、事業譲渡を拒んでいる。この場合「再生計画が遂行される見込み」がなく、手続きが廃止(194条1項)されるおそれが生じているといえる。この事態を回避するために、C社としては、管理命令(64条1項)を「利害関係人」として申し立てることが考えられる。この場合、管理命令が発令され、管財人が選任されれば、管財人は「破産債権者等」(2条2号)に当たるため、43条の代諾許可を申し立てることができる。そこで、まず、本問では再生計画認可後に管理命令申立てをすることができるか、できるとして管理命令の発令の要件があるかにつき検討する。
2計画認可後の管理命令申立ての可否
 管理命令の申立ては再生手続き継続中にすることができる。本件においては監督命令(54条1項)がなされているため、再生計画認可後も再生手続きは継続する(188条1項)。そこで、再生計画認可後においても管理命令の申立てをすることができる。
3次に監督命令の申立ての要件を満たすか。
管理命令の発令の要件は、「再生債権者の財産の管理又は処分が失当な場合」にあたることである。
 本件では、A経営不振は、Dが採算性を十分考慮することなく、他の分野に業務を拡大し、多額の赤字を出したのである。この場合、DはA社を適切に経営していく能力を有していなかったのである。さらに、Dは退任を拒否しており、再生計画で決まった事業譲渡のための株主総会決議を開こうとせず、再生計画の遂行を拒否している。この場合、DにA社の財産を委ねることは、好ましくなく、再生債務者の財産の管理又は処分が失当な場合にあたる。
 よって、管理命令の要件を満たすため、管理命令の申立てをすることができる。                    以上

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