2024年3月から兵庫の農場で離乳豚舎でのリキッド化に取り組み始めました。この時期の飼料は非常に高価で、kgあたり200~300円する飼料です。1頭が食べる量は多くないですが、実際月間の人工乳段階のコストは月間150万円ほどに及んでおりました。しかしながらこの時期の飼料は非常に製作が難しく、成分的なもの、嗜好性的なものだとか非常に苦労しました。まだ完全に完成したわけではありませんが、所感を書いていきます。

 まず最初に入ってきた原料が人間の粉ミルクでした。CPが10%程度なので、小麦たんぱくで総粗たんぱくを25%程度にそろえ、水分80%で給与しました。やはり配合飼料より良くない状況が続きました。食べるけど豚が横に膨らみ、縦に伸びていない印象でした。粉ミルクだけだと原料供給が安定せず、卵とチーズが入ってくるようになったため、小麦でんぷん粕+卵、チーズでたんぱくを25%程度に揃えました。序盤こちらの方が良かった印象があるが、日によって餌食いがまちまちで、この辺から胃潰瘍での死亡頭数が増加しました。多い時で30%ほど死亡があるときもありました。

 2024年6月頃は死亡のピークで、このまま続けたらどう考えても事業継続が立ち行かなくなるし、配合飼料に戻そうかとも思いました。来る日も来る日も豚に向き合い色々な方向性から考えました。日によって原料が変わったり、状況もとても良い状態が続くこともあれば、とても悪い状態が続く時もあり、飼料を作る人の手も変わり、検証が非常に難しい状態でした。

 良い状態が続き、急に悪くなり始めた8月末、特に作り方に変化はなかったので、でんぷん粕の衛生状態の異常があるのではないかと思い、でんぷん粕へのギ酸添加を行い、飼料へのギ酸添加をやめました。これが非常に悪い打ち手で、でんぷん粕へうまく均一にギ酸が混ざらず、胃潰瘍の発生頭数は増えて輪にかけて悪くなっていきました。急遽それを戻して様子見をした際に、飼料の見た目水分が薄くなっていることに気づきました。うちの農場は原料の水分が安定していない部分があり、同じ量配合しても水分がまばらになることが多くあります。出来上がり水分は計測してはずが、仕事が忙しくなり、計測できなかったようで発見が遅くなりました。もしかすると水分が多く、水分を胃から排出できないので飼料が十分量接種できず胃潰瘍が発生しているのではないかと思いました。

 水分を排出させるために必要なものは塩分とカリウムです。肌感覚として水分が高い飼料は塩分を増やすと食下量が増える感覚はありました。飼養標準豚を引っ張り出しNa濃度を確認すると、1~5kgの子豚のNa濃度0.25%、30kg以降の肥育豚でNa濃度0.10%・・・

 子豚が2.5倍量も必要だという事は全然知りませんでした。現物ベースで計算し、飼料設計するようにしたところ、太鼓腹が治り、非常に落ち着いた状況で寝るようになりました。また給水機からも多少水を飲むようになりました。これが1週間前に切り替えたばかりなのでこれですべて解決するか分かりませんが、状況的にはかなり好転しました。また肥育豚の塩分量も現物ベースで設計しなおししたところ、塩分添加量が増え、出荷体重が増加していることからミネラルの重要さを非常に感じました。おそらく塩分量の計算は現物量換算でやった方が良いと思います。これはギ酸も同様です。

 これらから塩分不足の豚の飼養行動が分かるようになりました。一つ目が、給餌の時間に餌箱に異常なほど騒ぎながら寄ってくる。また餌を食べた豚は体躯に似合わないくらい腹だけが出る。しっぽが垂れ下がり、尾かじりが発生しやすい。等です。

 非常に辛い体験でしたが、この経験は非常に勉強になりました。もしかしたら飼料衛生のところもあるかもしれないので、まだ本当にこれだけで解決できるかどうかは分かりませんが、今後2か月ほどフォローしていけば結果が分かると思います。