現代中国女工哀史 レスリー・T. チャン | So-Hot-Books (So-Hotな読書記録)

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書評と読書感想文の中間の読書日記。最近は中国で仕事をしているので、中国関連本とビジネス関連本が主体。

<My Opinion>

タイトルからは現代中国における工場労働者の過酷な労働条件や残酷な実態にスポットライトを当てたルポなのかと想像するが、そうではない。本書に描かれているのは、現状に甘んじることなく自らの腕で資本主義社会の少しでも「上」を目指そうとする現代中国人女性のたくましい姿である。

主な取材の地は広東省トウガン市である。観光で何度か訪れたことがあり、工場の中にこそ入ったことはないものの、あの雑多な街の雰囲気を知っているだけにとても現実感があった。組み立てライン式英語学習、ホワイトカラー要請学校のエピソード等はとても読み応えがあるし、中国人女性工員の人生をとてもうまく切り出して読者に伝えていると思う。

ルポタージュであるから、取材対象者の発言等でページ数が増えるのは仕方がないとは思う。しかし翻訳であるという点を差し引いても、この内容を伝える為に458ページというのはやや多すぎて途中で読むのが退屈になってしまった。


内容に関して付け加えれば、トウガンで働く女性工員の内、どれだけの女性がこういった上昇志向を持つのか、そういった全体感や定量データも多少提示してくれればより事実を明確に伝えられるのではと感じた。トウガンの大多数の工員はこの本に現れるような、上昇志向が極めて強くたくましい人々ではなく、一生工員としての仕事をまっとうすることがほとんどであろうと思う。


現代中国女工哀史/レスリー・T. チャン
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