<My Opinion>
初めて「面子」(メンツ)に関する本を読んだ。本書における著者のメンツに対する考え方は下記に集約される。
「上は政府高官から下は一般庶民まで、中国人は誰でも自分のメンツを持っている。だが、メンツのどの部分に重きを置くかは、性別、年齢、立場、地位、学歴、職業、性格、思想、生活地域などによって違い、時間、場所、相手、状況によっても微妙に差が出てくる。だからこそ、ある特定の人間、特定の事件にそって具体的に考えていくことが重要で、一つの物差しですべての人のメンツ、すべての場合のメンツを考えることができないのだ。」(P5)
考えてみれば当たり前のことであるが、要するにメンツは千差万別ということだ。著者は中国人25人にインタビューして、メンツに関する具体的なエピソードを引き出し、そのエピソードを読者に紹介する。そのエピソードを通して中国のメンツ文化を「体感」するというのが本書のねらいだ。本書を読むことで25人のメンツに対する具体的なこだわりを知ることができる点が有用だ。今後、中国人と付き合っていくときに「この人はいったいどんなメンツを持っているのか?」という視点で見てみると、その人をよりよく知ることができるかもしれない。
しかし、インタビュー毎についている著者のコメントがとても薄いことと、全体を通してなんとなく翻訳が原文を活かしきれていない印象を受ける。全体として文章にメリハリがないので、中国人のメンツというものにかなり興味がなければ途中で読み飽きてしまうだろう。