長い人生の中でも、この土地に用事があって訪れるということは無いだろう。
北海道の東の山間部にその廃校は静かに建っていた……
「えんがるちょうりつ しゃなぶち」と読む。
道を間違えたと思った。
木々に囲まれた道路を暫く走ったが町が見えなかった……
地図を見ても、すでに方向性を失っていた。
引き返そうと思い始めた時、町が見えてきた。
その廃校はすぐにわかった。
閉校してから8年という月日が経つが、未だに学校名が掲げられている。
現在は「社名渕地域公民館」として再利用されている。
廃校巡りをしていると、朽ちて行くのを待っているだけの学校もあるが、ここはグラウンドを除けば、休日の学校という趣であった。
結局、誰にも遇わなかった。
住宅もあるのだけれども、人の気配がしなかった……
公民館としては、きっと機能しているのだろう……
花が咲いていた。
それが無ければもっと淋しく見えたことだろう……
廃校には記念碑。
記念碑には校歌がある……
淋しいだけに見える過疎地にも、何処かに希望が落ちているはずだ……
きっと……
またひとつ日本の片隅で
学校が消えていった……
平成18年 遠軽町立社名渕小学校廃校