平日、僕は通勤に7時48分の電車
決まって前から3番目の車両に乗る
理由は単純明快だ。
そこに、君がいるから。
ふわふわにセットされた髪の毛
小さな瞳、すらっとした鼻に、薄い唇。
それが僕の恋する君
駅のホームで電車を待ちながら
今朝に見た夢を思い出す
それはモノクロの世界だったけど
いつもと同じ電車内に女の子と僕だけ乗ってる
それは君だってことがすぐに解った
とても、ありきたりなことで
笑いながら話している
隣にいる君にこの秘めた想いを伝えようか迷っていて
重い唇を開きかけた瞬間
時計のアラームで目が覚めた
起きたら当たり前のことだけど
隣に君はいなくって
僕は再びモノクロの世界に戻りたくなったんだ
アナウンスが電車がまもなくホームに来ることを知らせる
もうすぐ君の乗っている電車が来る
こんな暑い真夏の中なのに、僕は口元がついにやける
もう、恋なんてしないと思っていたんだ
前の彼女と別れる時にこっぴどく振られたから
だから、こんなに胸を締め付けられるほどの
恋をするなんてもってのほか
まだ名前も声すらも知らない君に。
そして、僕は今日も前から3番目の車両に乗る
いつもと同じ席に座る君を見つけた
僕は思わず見惚れてしっかり前を向くことすら出来ない
横目でちらちらと見るだけで精一杯
現実はこんなもので、もしふたりきりになることがあるとしたら
きちんと目を見て話せるのだろうか
モノクロの世界では、あんなに話せていたのに。
君を好きになってから
僕は普段みないテレビも見る様になって
ファッションもいつの間にか気にするようになって
届くはずのない片思いだけど
僕の日常は変わったんだ
毎日が煌びやかで楽しくて、妙な充実感
電車が駅に着く度に増えていく人に押されて
初めて君の座る席の前に立ってしまった
僕は酷く動揺する
手を伸ばせば届く距離に君がいるんだ
だけど、次の駅で降りなければいけない
電車が揺れるたびに左右上下に動いてるうちに
僕は後ろのひとに押されて脚が1歩出て
君の脚にぶつかる
「すみません」とっさに謝ると
「大丈夫ですよ」そう言われたんだ
初めて聞く君の声は殆ど電車の音にのまれて
聞き取りにくかったけれど
ちょっと高めで可愛らしい女の子らしい声だった
余韻にひたっていると
僕は目的の駅に着いたので
名残惜しいと思いながらも電車を降りると
そこはいつもと同じ様に人混みで溢れていたけれど
僕はいつもと違っていた
こんな暑苦しい人混みの中
顔をほころばせながら歩いているのは
きっと僕だけ。
※HYさんの「モノクロ」という曲をイメージして書きました。
↓HYさんのモノクロ↓