【事例 №3 単価が厳しい金属加工業】
<業歴42年 制御盤、精密板金加工製造>
【現状把握】
・創業当時は町工場でありながら有力な大手企業の下請け業者としてある程度の業績を維持してきた。
・業績好調な時期にも資金の蓄積や設備に十分な投資をすることなく流れにまかせた奔放な経営体質を続けてきた。
・リーマンショックを境に経営環境が激変、限られた発注に競合他社が群がる過当競争の中で極限まで単価が絞り込まれる状況に陥る。
・数か月間も役員報酬を棚上げにしなければならない程資金繰りは圧迫しまさしく切羽詰まった状態である。
【経営課題】
・経営者としては正当な利益を確保できる売り上げを獲得したいが発注先は価格交渉が出来るような相手ではない。
・長年付き合いのある企業の担当者から信頼関係で仕事を回してもらいながら凌いでいるが量的、価格的に未充足である。
・時間を見つけては新規開拓の営業を行うも目ぼしい相手は見つからず、たまに入る情報も信用上の問題があるような先ばかり。
・とっくに償却期間が経過した機械をメンテしながら使用しており、最新ではないにしろ相応の機械への切り替えが可能なら状況を改善できるだろうが現状においては困難。
【取組内容】
・経営陣の課題を聞いた時点でどこにも打開策が見いだせないまさに八方ふさがりのお手上げ状態。
(既に経費見直し、人員整理、機械売却など打てる手は実行済みである)
・事業の立て直しは経営者がその手段と実行に係る期間及び必要な資金について算定しスケジュールと照らして検討するがそのどれも算段出来ない。
・それでも社長の悩みである資金繰り環境を安定させるべく銀行融資の取組方法を検討。
・信用分散の考え方により3つの資金の出し手について検討。一つは信用保証協会の保証、もう一つは政策公庫による資金、そして銀行のプロパー資金と各々の実績範囲を超えない金額で資金繰り支援策をまとめ、交渉し応諾が得られたため当面の資金安定化を実現。
【実績と効果】
・経営陣が金策に走る事無く状況改善のために活動する時間が得られた。
【その他】
・本件は融資実行してからおよそ1年で資金繰りに行き詰まり破産申請に至る。そしてその半年後に裁判所の免責が認められた。
・経営者と最後に会った際「手を尽くしてもらいありがたかった」と言われた。また今までお世話になった方々になるべく迷惑を掛けずに終わらせたかったが力及ばず気付いた時には何も残っていなかったとの事であった。
・顧客企業が破綻した以上、本件は成功事例とは言い難い。しかし経営の現場においてはしばしば努力ではどうにもならない場合がある。
・担当として顧客が追い込まれた時に何が出来るかという中で出した結論が一時であっても経営者が資金繰りに追われる時間を回避し、何らかの打開案を得られた可能性もあったのではないか、と思いたい。
<以上ケース№3>