すすきのにあるバーのカウンター。
その中で料理の準備を進めるなかちゃんが、店内で飾り付けをする三冬に声を掛ける。
「飾り付け、かわいいですね?」
「私、保育士だから、普段からこういう飾り付けしか作ったことがなくて。
お店の雰囲気に合わないですよね?」
「そんなことないです。私もこういう飾り付けは大好きです。
今日は貸し切りにしましたから、思う存分、飾って下さい。」
「ありがとうございます。本当ごめんなさい、急なお願いで。
みんな忙しくて、なかなか予定が付かなくて。一夏は大丈夫でした?」
「二つ返事でしたよ?『行く行く』って。」
「良かった。場所に確信が持てなかったけど、ここで正解みたい。」
そう言って、改めて店内を見回す三冬に、きょとんとするなかちゃん。
そこへ、店の扉が開いたかと思うと、その扉の隙間から、店内をそっと覗き込む七春。
そんな七春に気付いて、声を掛ける三冬。
「七春、いらっしゃい!」
「三冬、お疲れ。何?飾り付けしてるの?」
「そうだよ?」
「私、何も聞いてないんだけど?今日って、何の集まり?」
「私もよくわかってない。」
「わかってないのに、飾り付けしてるの?」
「うん!」
そう言って微笑む三冬に、首を傾げながらも、飾り付けを手伝う七春。
そこへ今度は、執務を終えた十秋が店へとやって来る。
「お疲れー!…って、お~凄い!何?この飾り付け?」
「十秋?感心してないで手伝って?高くて届かないの。」
「どれどれ、任せな?」
そのまま妊娠中の三冬を気遣いつつ飾り付けを手伝う十秋を横目に、なかちゃんに声を掛ける七春。
「パートナーか。いいな?」
「七春さんは、以前からお二人をご存知なんですよね?
パートナーになる前と後で、違いってあるんですか?」
「どうだろう?十秋が優しいのは、いつものことだし、三冬が甘えるのも、いつものことだけど、
二人の醸し出す雰囲気と言うか、それが以前とは違う気がする。上手く言えないけど。」
そう言って改めて二人を眺める七春を、料理をテーブルに並べながら、優しく見守るなかちゃん。
飾り付けも料理も、準備が整ったところで、声を挙げる十秋。
「お?準備出来たんじゃない?」
「あと一人来てない。」
「あと一人?」
十秋が三冬の言葉にきょとんとしたその時、店の扉が開いて、声が挙がる。
「おっしゃー!今日は飛ばすぞ!なかちゃん、ブランデーボトルで…」
そこまで言ったところで、店内の十秋と三冬と七春に気付く一夏。
飾り付けにも目をやりながら、そっと扉を閉めつつ、声を挙げる。
「店、間違えました…」
そのまま扉を閉めて店を後にしようとする一夏を、廊下に出て呼び止める三冬。
「待って一夏!」
「間違いです。」
「間違いじゃない!一夏を待ってたの!」
そう叫ぶ三冬に、足を止める一夏。その場に立ちすくむ一夏に、三冬が改めて声を掛ける。
「入って?」
そう三冬に促され、一呼吸挟みつつも、店に入る一夏。
店内にいる十秋や七春とは目を合わせず、一人カウンター席に着くと、
そのまま、出されたブランデーを傾ける一夏。そんな一夏に、十秋が声を掛ける。
「久しぶり。元気だった?」
「おかげさまで。」
「私は何もしてないけど?」
「色々と進言してくれたんでしょう?」
「本当のことを言っただけ。一夏の政策は正しかったって。」
そんな十秋の言葉に、ややしばらくの沈黙を挟んで、声を挙げる一夏。
「私、どこで間違った?」
「一時封鎖の辺りかな?」
そんな十秋の言葉に、唐突に声を挙げる七春。
「あー、はいはい!そんなこともあったわね?懐かしい!でも良かったじゃない?」
「良かったって、何が?」
すかさず入った一夏の突っ込みに、沈黙する七春。そんな七春を横目に、声を挙げる十秋。
「たくさんの人が亡くなって。たくさんの人が傷付いて。
一夏も、志穂さんを失った。一夏だけじゃない。私にも責任があった。」
そのまま、ブランデーを傾ける一夏を前に、続ける十秋。
「亡くなった人達に報いる為にも、私達は立ち止まっちゃいけない。
前に進まなくちゃいけないんだ。」
そう言うと、手の平を上に向けて、身体の前に差し出す十秋。
そんな十秋に、手の甲を上に向けて合わせる三冬。そのまま隣に佇む七春に視線を送る。
「え?どうすればいいの?」
三冬に視線を送られ、手の平と手の甲をクルクル返しながらも、手の甲を上に合わせる七春。
最後に一夏に視線を送りながら、三冬が声を掛ける。
「一夏?」
そんな三冬の呼び掛けに、軽く溜息を挟んで、声を挙げる一夏。
「わかってるの?私は、あなた達を殺そうとしたのよ?」
「そうだね。でも、私達は生きてる。生きていれば、やり直せる。何度でも。」
そんな三冬に、やれやれという表情を見せながらも、手の甲を上に合わせる一夏。
そこへ十秋が声を挙げる。
「私に免じて、一から始めよう!」
そんな春夏秋冬の誓いを、カウンターの中から見守りつつ、声を挙げるなかちゃん。
「みなさん!料理、冷めないうちにお召し上がり下さい!」
その後は、料理とお酒を頂きながら、高校時代に戻ったように、時間を忘れて楽しむ一同。
最後はババ抜きをして楽しむ。最後に残ったジョーカーを、お互いに引き合う七春と三冬。
なかなか勝負が付かない二人に、あきれた顔で、声を掛ける一夏。
「もう、いつまでやってるのよ?」
『次で決着付けるから!』
そしてやっとのことで、組みのカードを選んで上がる三冬。
最後に残ったジョーカーを、納得いかないという顔で見つめる七春に、一夏が声を掛ける。
「ジョーカーは七春か。」
「やあ、もう1回!」
そんな七春に、声を掛ける十秋。
「そろそろ時間みたいだよ?」
「え?…って、22時!?嘘でしょう!?今日23時からライブ配信あるのに!」
「そうなの?」
「いやっ!タクシー使わないと間に合わない。しかも深夜増しじゃん?じゃあ、そういうことで!」
そのまま足早に店を後にする七春。そこへなかちゃんが、トランプを片付けながら声を挙げる。
「あ…七春さん、ジョーカー持って帰っちゃったかも?まあ、いっか。」
そして日付が変わった深夜。無事その日予定されていたオンラインゲームのライブ配信を終え、
一人部屋で、声を挙げる七春。
「ふぅ…酔いが回っていたせいか、途中、呂律が回ってなかったな?
自分ではちゃんと喋れてるつもれだったけど。それにしてもコメントがうざい。
ちょっと噛んだだけで『噛んだ?w』とか『酔った?w』とか。わらわらわらわら、うるさいよ?
特に男。本当なんなの?あのデリカシーの無い生き物は?もう少し、女の子の視聴者、
増えてくれないかな?そうだ!今度のライブ配信、女の子限定の企画にしてみるか?
でもそれだとお金がな?あーもう!男なんて、黙って銭だけ投げてりゃいいんだよね?
あ。なんか、話してたらイライラしてきた。ホットミルクでも飲んで、落ち着こう。」
そう言って、部屋を後にする七春。ホットミルクを入れに、階段を降りつつ、一人呟く。
「今死ね、すぐ死ね、早く死ね。今死ね、すぐ死ね、早く死ね。
今死ね、すぐ死ね、早く死ね。今死ね、すぐ死ね、早く死ね…』
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~FIN~
長い間ご愛読頂きありがとうございました。
メンヘラ治療の為、しばらくお休みします。
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この物語はフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。
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