
《ホロヴィッツ・コンサート1975/1976》
シューマン:ピアノソ・ナタ第3番「グランド・ソナタ」 作品14
スクリアビン:ピアノ・ソナタ第5番 作品53
ウラディミール・ホロヴィッツ/ピアノ
ホロヴィッツ2枚目のレコード、《ホロヴィッツ・コンサート1975/1976》とあるが、この時期に行われたコンサートの演奏曲目を指し、ライブ録音を意味するものではない。ジャケットには76年2月、5月に録音とある。なお、76年1月25日にシアトルで開催されたコンサートには、日本から57人もの「ホロヴィッツ・ツアー」が大挙押しかけて米国でも大きな話題になったという。高度成長に向かって突っ走る当時の日本を写した姿であった。
ホロヴィッツお好みのシューマンとスクリアビンのソナタ、このレコードで、これぞホロヴィッツと言える強烈な演奏が聴ける。特に、「管弦楽のない協奏曲」の副題が付いたシューマンの《グランド・ソナタ》、色彩豊かで華かなこの曲を、“完璧に”弾きこなしている。粒立ちのいい澄んだ音色、破たんのない早いパッセージ、凄い演奏だと思う。ただ、前回も言ったように、非の打ち所のない“完全な美人”は私には近寄り難く、音楽の流れに却って浸り込めない。同じシューマンでいうなら、交響的練習曲》を弾くリヒテルの様な白熱的なドラマ性が私は好きなのである。とはいえ、このレコードの価値を蔑む積りはさらさらない。
因みに、ジャケット解説の門馬直美氏の言葉では、「まさにこれは圧倒的な演奏であり、この2曲をこれほどに聴かせるレコードは、先ず見当たらないのではないか。ホロヴィッツだからこそ可能だというほかない。この人は何んと言っても20世紀の奇跡のピアニストであり、このレコードは、それを裏付けるものなのだ」と。