前回、特定小電力トランシーバーに関して書かせて頂きました。
 
今回は災害時における特定小電力トランシーバー(以下特小)の利便性に関して書かせて頂こうと思います。

特小は400MHz帯を使用した近距離の通信を目的とした無線局で、免許・登録等は一切不用なので買ったその場で運用が可能です。
 
現在発売されている機種は2種類で、シンプレックス(交互通信)の20チャンネル機と中継レピーター対応の47チャンネル機です。
 
前回も書きましたが、メーカーや機能によって値段はまちまちで、個人的には送信距離を稼げるロングアンテナのモデルをお薦めします。
 
出力は最大10mW以下と非常に小さな出力で交信を行う為、通信距離が限られます。
 
1.市街地では100m~200m
 
2.見通しの良い所では長くて500m程度
 
3.見晴らしの良い高台からでは1㎞以上
 
これはあくまでも一般的なカタログ上での数字です。
 
障害物や建物の密集度合いによっても通信距離は左右されますが、実際の運用でも同程度の通信距離だと思って頂いて良いと思います。
 
 
これ等を踏まえて災害時に運用する際は、学校や役場の屋上等の高台に無線本部を構えて、他の無線局との交信をすると円滑に連絡が取れると思います。
 
混信を防ぐ為に、持ち場毎にチャンネルやグループコードを決めて行動すると、より円滑に連絡が行えると思います。
 
例えばALINCO機のチャンネル表示だと、L5チャンネルを使用して、グループコードを38にセットして使用する事で、他の持ち場が同じL5チャンネルで他のグループコードで運用しても混信を回避する事が出来ます。

特小のチャンネル表示には法的な決まりが無く、メーカー毎に違うので、必ず事前に交信チェックをしてから使用しましょう。

例えば一番普及率の高いICOM機の16チャンネルを他のメーカーで受信するには違うチャンネルにセットする必要があります。
 
STANDARD機 5チャンネル
 
KENWOOD機 h5チャンネル
 
ALINCO機 L5チャンネル
 
という様に、メーカー毎に表示は異なりますが、どのメーカー同士でもチャンネルさえ合えば交信が出来ます。
 
グループコードの設定方法はたとえ同じメーカーであっても機種毎に違うので、必ず説明書でチェックしましょう。
 
 
特小の通信には中継レピーター(以下レピーター)を使用した運用方法もあります。
 
レピーター対応の機種(47ch機)が複数ある場合は、付近で最も高い所ににレピーターを設置して対応機をレピーターチャンネルに合わせる事で、通常よりもかなり長い距離間での交信が可能になります。
 
レピーターとは本来通信の妨げとなる高台に設置する事で、高台の反対側への通信を可能にする為の中継局の事を言います。
 
出力は特小のトランシーバーと同じ10mWで、山の頂上等に設置する事でロケーションによっては数10㎞離れた相手との交信も可能になります。
 
レピーターには幾つか種類があり、屋内用・屋外用の他にトランシーバー自体がレピーターになる機種(実勢価格は約2万円~3万円)も有ります。
 
レピーター機能付きトランシーバーは屋外用レピーター専用機(実勢価格は約10万円強)を購入するより安価ですし、内蔵電源(乾電池)で購入後すぐに使用出来るのでお薦めです。
 
しかしこの運用を行うには、それなりに知識のある方が設定し、運用の指揮に当たる必要があると思います。
 
 
 
資格・免許が必要無い無線の中には、登録申請を行う事で運用が出来るデジタル簡易無線があります。
 
最大5Wという大きな出力で、市街地でも1㎞ほどの通信距離があるので利便性は高いのですが、特小と比べて設定等の知識が必要な為に初心者の方にはお薦めしづらい面もあります。
 
またデジタル簡易無線は業務で運用している企業が多く、ユーザーコードを設定していない企業も多い為、チャンネル毎に5桁のグループコードを駆使して業務局との混信を回避する必要に迫られる場合が多い面もあります。
 
特小では乾電池で可動する物がほとんどですが、デジタル簡易無線はリチウムイオンバッテリーを採用している物が多く、ライフラインが停まった状況下では長時間の運用には不向きな面もあります。
 
価格でも特小が¥8.000~¥30.000に対してデジタル簡易無線は¥38.000~¥50.000強とかなりの開きがあるので、一般の方が購入されるには特小の方が入手しやすいと思います。
 
これ等のライセンスフリー無線は、無線の専門店だけでは無く、家電量販店等でも購入が出来るので、専門店の敷居が高いと思われている方々でも気軽に購入出来ると思います。
 
 
実は特小の災害時運用に関しては少なからず不安もあります。
 
特小であっても一般的に無線は業務での運用が多く、個人で無線機を所有されている方が少ない為、普段から使用方法を熟知されている方が少ないかと思われるからです。
 
資格・免許が不要という事もあり、近年レジャーでの無線運用が少しづつ増えて来てますが、それでも絶対数は少ないのではないかと思います。
 
 
最後に特小トランシーバーは災害時に最もアクティブに使用出来る通信機器ではありますが、有効に活用する為には普段から積極的に運用して、ある程度の知識を身に付けておく事が重要です。
 
いざという時に使用方法が分からなかったり、電池が無かったりすると使用出来無い事になりますので、普段から複数台でのドライブやアウトドアなどで是非とも活用して頂きたく思います。
 
という訳で、今回は特小トランシーバーの災害時運用における利便性について書かせて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
 
近年自然災害により被災される方が増えた事もあり、今回の記事を書かせて頂きました。
 
私自身も東日本大震災で被災した事もあり、様々な地域の被災者の方の安否確認や復興活動に少しでも役立てればと思います。