舞台『阿呆浪士』
東京公演も千秋楽を迎えたので、ネタバレ感想を。
主人公の長屋の魚屋“八”は酒と女にだらしがなくお調子者。
ある日偶然血判状を拾い、同じ長屋に住むお直に好かれたくて、自分が赤穂浪士であると嘘をつく。
ここまでは阿呆と付くからには相当パロディ時代劇なのかと思っていたのだけど、全く違った。
“八”は嘘をついて、その嘘を誤魔化す為に嘘を重ねる。そしてその挙句、赤穂浪士として討ち入りするハメになってしまう。
嘘をつくことは誰しもが1度は経験した事があるとは思うが、ここまで切羽詰まった経験もまた珍しい。
一方、血判状を落とした本物の赤穂浪士“田中貞四郎”は、それまでとは違う人生を送ることになる。
赤穂浪士四十七人のうち半分は町民や落ちぶれの浪士。それぞれの人生や運命が討ち入りで大きく変わることになる。
討ち入りを決行しない内蔵助に八が食って掛かっていく場面では、侍に対する町民の想いを思うと胸が痛んで涙ぐんでしまう。
「どんなに高い金を提示されても言い値で置いてくるしかねぇ。そんな生活でも、いつかは侍が俺たち町民の為に何かしてくれると思うから我慢できるんだ」
「それなのに、なんで仇討ちしねぇんだ」
「ちきしょうめ!それなら俺が討ち入りしてやる」
愕然とする内蔵助。
町民と侍の身分の違いや想いの深さが昔も今もそんなに変わらないのかもしれない。
町民は逆らうことなく、従うしかないのだ。
赤穂浪士二十四人と阿呆浪士“八”たち町民の四十七人は無事城に着き、吉良上野介の首を取って江戸へ戻って行く。
しかし幕府は半分が町民と知り、謀反だとして全員打ち首の処分を下す。
仇討ちに成功するも打ち首の刑に処されてしまうお調子者“八”。
赤穂浪士は赤穂の殿様に忠臣したけれど、阿呆浪士は阿呆の神様に忠臣する。武士道も意地もクソもない。楽しく阿呆にあっぱれと散っていった。
主演のとっつーはお調子者の八そのものだった。なりきってた。劇中で八が「ただ頷いてろ」といわれ、「うん!」とだけ言うシーン。これはもう戸塚祥太だった(笑)。とにかく可愛い
八の妻 お幸はどこまでも八の為に献身に尽くす。阿呆の旦那にとことん尽くす。女として妻として、いじらしかった~
一方、仇討ちしそびれてしまった貞四郎は、結婚という幸せを掴んだものの、八たち町民の打ち首をお茶屋で聞かされる。
結局“貞”も、自責の念に駆られ自決してしまう。
あの福ちゃんの背中の演技がたまらなくつらかった。涙が止まらなかった。さすが福ちゃん…
それぞれの想いが痛いほど伝わって、とにかく泣けてくる。
からの、スタオベ
最後は楽しく阿保のテーマで踊ってペンラ振ってました。
身体が勝手に動いちゃう~
劇中のペンライトや団扇による客演もとても楽しかった。キャストが踊り観客はペンラや団扇を振ってみんな楽しさと一体になって、初めての体験に本当に楽しめました
結局、大石内蔵助演じる小倉久寛さんが一番面白く、泣かせてくれたのかも…
来週は大阪公演。
まだまだ楽しく阿保にあっぱれと暴れまくって下さい。
無事幕が降ろせますように…