いつもそこにいた、甘えて拗ねていた娘は、もうそこには居ない。


嬉しいことなのだけど、母としては、ちょっぴりさみしくもある。


大きく成長したんだなぁ、いつのまにか。





希望を失いかけた、この生命。なんとかがんばろうと決心した20歳の時。


踏ん張り続けたこの30年間。


人を憎んだこともある。まだ、きちんと許せていないけど。


ほんの少しずつだけど、笑って済ませられるようにもなった。






いつまでも生きられないと、頭ではわかっていたけれど、心は、生きていてくれるこの瞬間瞬間、時間が止まればいいのに、と願ったあのとき。


失くしてから、この悲しさの時間が、早く過ぎてしまえばいいのに、と願ったあのとき。涙は多く流さず、生きた。






今後この家族がどうなるかも、先は見えないまま、必死に育てたもうひとつの生命。もう今は、そこに居ない。


気付かないうちに、大人になっていた。愛する人と共にある、命をかけて守りたいものがあるということは、人をこんなにも変えるのだ。



この世にないひとりの命と、この世を共に生きるもうひとつの命に、背中を、強く押された気がした。