みなさんはふらリーマンという言葉をお聞きになったことはありますか?
仕事が終わっても真っ直ぐ家に帰ることなく、居酒屋などに立ち寄ってフラフラ遊び歩いているサラリーマンのことだそうです。人によって理由は様々なようで、同僚と飲み歩くことが好きという人もいれば、早く帰宅すると奥さんに疎まれるので時間を潰すためにふらふらする人もいるそうです。
どちらのタイプのふらリーマンも褒められたものではなく、どちらかと言えば、なんとも情けないおじさんだなぁと思っていました。

…先日までの私は。

妻と顔を合わせたくないから時間を潰して妻が眠った頃合いを見計らって帰宅しようかな…そんな風に考えるともなく考えている自分に気づいたのです。

原因は明らかでした。
先週の夫婦喧嘩です。その際に妻の口から出た一言で、私の心は死んでしまったように、暗く沈んでしまったのです。

『あんたみたいに、朝から夜遅くまで仕事しかしないでいいラクな人生を私だって送ってみたいわ!』

人様からみれば普通のことなのかもしれませんが、結婚して13年、家族を食べさせていかなければと思って、私なりに、必死に働いてきたつもりです。お金が足りないというので、残業代をいただけるように繁忙な部署をあえて希望して、朝早くから終電ギリギリまで働いてきました。上司のパワハラに死にたくなった時も、子供の笑顔を思い浮かべて電車に飛び込むのを何とか思い止まってきました。身も心もボロボロになりながらも、家族のためと思って必死に、必死に働きてきました。その甲斐もあって、同期の誰よりも早く昇進試験にも合格して、今のポストまで最短コースでたどり着きました。

しかし、妻は、そんな私の13年間を総括して、『仕事しかしないラクな人生』と考えていたんですね…。
妻は子育てをしてくれて、家事もしてくれて、パートにも出てくれました。パートは週に2、3日とはいえ、それらをこなすことは大変なことだったと思います。だからこそ、休みの日には掃除、洗濯などの家事をできるだけやって、妻にも休んでもらえるようにと思って行動してきましたし、ママ友と飲みにいくことも、自宅でママ友と飲み会を開くことも、二つ返事でOKしてきました。少しでも気晴らしができればと思ったからです。

お互いに尊重しながらやってきた。
そう思っていたんです。
しかし、そうではなかったようです。

『仕事しかしなくていいラクな人生』

いろんなことを諦め、ギリギリの思いで踏ん張ってきた私の13年は、妻にはラクな人生と写っていた…鈍器で頭を殴られたような衝撃を感じました。夫として、父としてやってきたことの全てを否定された、その事実を目の当たりにして心が急速に萎縮して、どんどん小さく、固く、冷たくなっていくのを感じました。


私は今、単身赴任中です。週末になると自宅に戻る生活をすでに2年送ってきました。2年の単身赴任生活で初めて、帰宅することをこわいと感じました。妻とどう接していいのかわからなかったし、妻や家族を目の前にして自分がどうなってしまうのか、自分でも予想がつかなかったのです。
いつもなら、仕事が終わり、自宅に戻る前には妻にこれから帰ることを連絡していたのですが、連絡しようと思って携帯を手にとってもこわくて連絡できずに携帯をしまうということを何度も繰り返しました。どこかに立ち寄って気持ちの整理をつけようか、妻と顔を合わせないように時間を潰してから帰宅しようか…帰宅を先延ばしするための理由を探している自分がいました。でも、悲しいもので…どんなに出世して給料が増えても、妻からはお金がないと常に言われてきたこともあって、貧乏性が染み付いてしまったのですね…ここでコーヒーを一杯飲むのなら、その分を家計に回せる…この状況でもそんな風に考えて躊躇するんです。そんな自分に気づいて、また自分が嫌になる…そんなことを繰り返すうちに自宅のすぐ近くに来ていました。結局、妻ではなく娘にメールを送りました。もうすぐ家に着くとだけ伝えました。

帰宅すると何もかもがいつもどおりでした。先週の喧嘩などなかったかのように。内心はわかりませんが、妻はケロっとしていて、元気ないねと話しかけてきました。
子供たちの顔を見ていると目頭が熱くなってきてしまうので、何度もトイレに行って気持ちを落ち着かせました。


売り言葉に買い言葉で言っただけなのかもしれません。
何の気なく言っただけなのかもしれません。

でも、その言葉が発せられたということは、そのような思いが心にあるから咄嗟に出たのです。
私は言葉そのものにも傷つきましたが、その思いに大変傷つきました。

結局、妻と話をすることも、妻の顔をまともに見ることもできませんでした。条件反射的に避けている自分をどうすることまでしませんでした…。


今は単身赴任先に戻る電車の中です。
自分の気持ちを整理するために今この作文をしています。この先、自分の心がどうなってしまうのか、自分でも分かりません。

雨が降って地固まる
雨で地盤がゆるみ土砂崩れを起こす

もう、考えることもイヤになってきました。