特別講演1 「時間」 第1日目 6月18日(木)12:50~13:20
本学会では 映画監督の河瀨直美さんの講演を聴く機会が設けられました.
慣れないところをうろうろ歩いているうちに どこかで見覚えのある方のお姿があり, 「あ!」と気づいて拝聴. 残念ながら 東京オリンピックを撮られた映画について語られた前半部分は聴き逃しました.
後半は ご自身の作品『たしかにあった幻(2026)』について.
物語は フランスから来日した移植コーディネーター(と思う)の女性が主人公.
"移植"しか延命の手段をもたない患者(しかも小児 )と向き合う彼女は, 絶えず 患者の残された"時間"を考えなければならない,“時間“に追われる生活を送っています.
そのような中で ある時, 屋久島で バックパッカーの若者と出会います.
“時間”に縛られない生活を送る彼.
大自然の中での出会い,七夕の織姫と彦星との逢瀬を自分たちの出会いになぞらえる彼との交流 … その出会いと別れの中で 主人公が受け止める”時間”と 人間の”生”と"死" ….
映画自体が上映されたわけではないので, 私自身もそのストーリーはわかりませんが, 予告編からは 死とは ほんとうに無になることなのか, ただ形を変えていくだけのことではないだろうか, という”問いかけ”を感じました.
今回の講演では 監督の映画の撮り方がすこし明かされました.
このたびの撮影現場のひとつは甲南医療センターや順心神戸病院など.
映し出された一枚の写真には10人ほどの医療者に囲まれて座っている河瀨監督の姿が.
「これ, 変な写真ですね?どこがおかしいかわかりますか?…まず私, ほら, 白衣を着ています…」
「… そして周りにいる医療者のような人たち, この人たちもみな撮影スタッフです」
「… 私の映画撮影はこんな風に, 病棟の撮影では 私は,医師となり, 子役たちにも「河瀨先生」と呼ばせました」と.
監督が医師なら, 撮影スタッフもみな医療者になり切り, そうやって演じる子役たちから演技以上のものを引き出していく … だから「私の撮影には掛け声はありません.開始の掛け声をかけないまま撮影が始まっていく」と 撮影術を公開.
講演のテーマは「時間」.
河瀨監督が語る, ”過去””現在””未来”は,
”過去”があって”現在”がある.”現在”をどのように生きるかで”未来”が決まると言われている.”過去”は変えられないけど, ”未来”は変えることができる … と言われているが, ”現在”から つながる”未来”は ”過去”をも変えることができると思う, と ….つまり"未来"も"過去"をも "現在”の生き方, 在り方が変えることができるのだ, と.… この言葉に救われる人は多いだろうな と思いました.
… 映画がどのようなストーリーで完結を迎えるのかわかりませんが, 観終わった方々から「まさに”河瀨直美ワールド”だった」という感想が相次いだということですから, 想像を逸した展開のよう … 俄然 興味を抱きました
ちょうど数日前にフランスで封切されたそう.
日本では終了したそうですが, 会場からは再上映を求める拍手が湧きました.
ところで, 壇上の 河瀨直美監督は輝いており, 最後列の座席に座った私の目にも眩しいばかりでした.姿だけではなく, 一言一言が心に沁みていくような ….
そのあとにつづいた,大阪大学 心臓血管外科の 澤 芳樹先生が「今の講演のあとには 本当にやりにくい」と, 前置きせざるを得なかったほどでした.