実はビビリだったりして
7月26日、夏休みに入ってすぐのことだった。
僕は部活動に向かおうと最寄駅に向かっていた。電車の時間がギリギリになっていたので、小走りで向かっていた。駅にたどり着く少し前の十字路に出た時だった。
左右確認を怠ったせいで、右手から来る乗用車に気付かなかった。 クラクションとけたたましい急ブレーキの音が辺りに響き渡った。クラクションを鳴らされて右を向いた時にはもう遅かった。ドンッ という鈍い音が響き、僕の体は5メートル程、宙に浮いた。アスファルトに叩きつけられて、体の中心に鈍痛が走る。その直後、体のあちこちから鋭い痛みがした。
視界がぼやけていく。おそらく意識が遠のいていっているようだ。僕は死んでしまうのだろうか。こんな死に方あっけないなぁ。あと1ヶ月もしないうちに楽しみにしていた花火大会が待っていたというのに。 花火大会のことを考えた途端、生に対する執着が強くなった。
「死にたくない。死にたくない。もっと生きていたい」
声にならない声をモゾモゾと口を動かしながら発した。が、すぐさま体全身から力が抜けた。
次に目を覚ました時は、白い天井が僕の目に映った。どうやら夢ではなかったみたいだ。体を動かそうとするが首の辺りが重たく、上体を起こそうとしたが腹筋に激しい筋肉痛のような痛みが走った。首の周りにコルセットが巻かれているのに気がついた。
すると、右足前方の方にあるドアが開き、看護師が僕の前に現れた。彼女は意識を取り戻した僕に気がつき、喜んだ表情を浮かべた。
「大丈夫ですか? 体は安静にしていて下さいね」
優しくそう語りかけた。
どうやら僕は、頚椎を少し痛めてしまったらしい。一生戻らないような重傷ではないみたいだが、神経が通っている頚椎を痛めたわけで、腹筋が痛かったり、体が重たかったりするようだった。いわゆる軽いムチウチらしい。
しばらくして、母親が蒼白した面持ちで僕の病室に入ってきた。僕は極力、彼女の心配を解きたかったので先に明るく声をかけた。
「母さん、ごめんね。でも、大丈夫みたいだよ」
笑顔の僕に彼女の表情は少し緩んだが、その途端に両目からボロボロと大粒の涙を流して駆け寄ってきた。
「良かった、本当に無事でよかった」
子どもみたいに泣く母を前に、僕は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「ごめんね。心配や迷惑をかけてしまって」
医療費やら、家事がしばらくできなくなってしまうことやらを考えると、気が遠くなる。さっきまで別の意味で遠のいていた訳だが。
母親と看護師が長い間話をしていた。といっても母の質問攻めに看護師が親切丁寧に答えるような会話だった。
どうやら僕はコルセットを着けたままでなら、
2日後には退院しても良いみたいだった。勿論、しっかりと身体全身が動かせるようになるまでは絶対安静が厳守だそうだ。
母は、夕方に着替えなどを持ってくると言って一旦家に戻った。 僕は礼を言って、母が病室を出た後、仰向けになったまま天井を眺め続けた。
幽霊が怖いから入院は嫌だという人は少なからずいると思う。僕も、自分が入院することになる前まではその意見に賛成だった。しかし、いざ入院生活をしてみると、全く別の理由で嫌気がさした。病室で過ごす時間は嫌に長く感じ、生命力を吸い取られる気分がして、僕は一刻も早く退院をしたかった。
気分がブルーだからといった訳ではなく本当に、味のしない晩御飯を食べた後、僕はサッカー部の友人に、事故のこととしばらく休まなければならないことを連絡した。皆、心配の声を寄せてくれて励まされた。監督にも伝えてくれるようだ。安静にして、すぐに治して復帰しなければならないなと心から思った。
ちなみに、その日の夜はトイレに1人で行けなかった。
僕は部活動に向かおうと最寄駅に向かっていた。電車の時間がギリギリになっていたので、小走りで向かっていた。駅にたどり着く少し前の十字路に出た時だった。
左右確認を怠ったせいで、右手から来る乗用車に気付かなかった。 クラクションとけたたましい急ブレーキの音が辺りに響き渡った。クラクションを鳴らされて右を向いた時にはもう遅かった。ドンッ という鈍い音が響き、僕の体は5メートル程、宙に浮いた。アスファルトに叩きつけられて、体の中心に鈍痛が走る。その直後、体のあちこちから鋭い痛みがした。
視界がぼやけていく。おそらく意識が遠のいていっているようだ。僕は死んでしまうのだろうか。こんな死に方あっけないなぁ。あと1ヶ月もしないうちに楽しみにしていた花火大会が待っていたというのに。 花火大会のことを考えた途端、生に対する執着が強くなった。
「死にたくない。死にたくない。もっと生きていたい」
声にならない声をモゾモゾと口を動かしながら発した。が、すぐさま体全身から力が抜けた。
次に目を覚ました時は、白い天井が僕の目に映った。どうやら夢ではなかったみたいだ。体を動かそうとするが首の辺りが重たく、上体を起こそうとしたが腹筋に激しい筋肉痛のような痛みが走った。首の周りにコルセットが巻かれているのに気がついた。
すると、右足前方の方にあるドアが開き、看護師が僕の前に現れた。彼女は意識を取り戻した僕に気がつき、喜んだ表情を浮かべた。
「大丈夫ですか? 体は安静にしていて下さいね」
優しくそう語りかけた。
どうやら僕は、頚椎を少し痛めてしまったらしい。一生戻らないような重傷ではないみたいだが、神経が通っている頚椎を痛めたわけで、腹筋が痛かったり、体が重たかったりするようだった。いわゆる軽いムチウチらしい。
しばらくして、母親が蒼白した面持ちで僕の病室に入ってきた。僕は極力、彼女の心配を解きたかったので先に明るく声をかけた。
「母さん、ごめんね。でも、大丈夫みたいだよ」
笑顔の僕に彼女の表情は少し緩んだが、その途端に両目からボロボロと大粒の涙を流して駆け寄ってきた。
「良かった、本当に無事でよかった」
子どもみたいに泣く母を前に、僕は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「ごめんね。心配や迷惑をかけてしまって」
医療費やら、家事がしばらくできなくなってしまうことやらを考えると、気が遠くなる。さっきまで別の意味で遠のいていた訳だが。
母親と看護師が長い間話をしていた。といっても母の質問攻めに看護師が親切丁寧に答えるような会話だった。
どうやら僕はコルセットを着けたままでなら、
2日後には退院しても良いみたいだった。勿論、しっかりと身体全身が動かせるようになるまでは絶対安静が厳守だそうだ。
母は、夕方に着替えなどを持ってくると言って一旦家に戻った。 僕は礼を言って、母が病室を出た後、仰向けになったまま天井を眺め続けた。
幽霊が怖いから入院は嫌だという人は少なからずいると思う。僕も、自分が入院することになる前まではその意見に賛成だった。しかし、いざ入院生活をしてみると、全く別の理由で嫌気がさした。病室で過ごす時間は嫌に長く感じ、生命力を吸い取られる気分がして、僕は一刻も早く退院をしたかった。
気分がブルーだからといった訳ではなく本当に、味のしない晩御飯を食べた後、僕はサッカー部の友人に、事故のこととしばらく休まなければならないことを連絡した。皆、心配の声を寄せてくれて励まされた。監督にも伝えてくれるようだ。安静にして、すぐに治して復帰しなければならないなと心から思った。
ちなみに、その日の夜はトイレに1人で行けなかった。
