人探しの依頼はスピードが命。
いなくなってから日が経つにつれて情報の鮮度が下がり足取りが掴めなくなるからである。
その日も突然、新宿に行ってくれとの連絡があった。
この時点では誰がいなくなったのか、どういう状況なのか分からない。
向かってる途中に依頼内容が簡単にまとめられた資料がスマホに届く。


どうやら、16歳の女子高生が母親と喧嘩して家を出て連絡がつかないらしい。
なぜ新宿かというと貯金の引き出しが新宿駅の近くであったからということ。


どうせ、汚いウンコ色の髪に露出の多いだらしない格好して、会話の内容も「キモっ」と「マジウケる」だけで成り立たせる大馬鹿不良娘だろう。
こんなふしだら娘はちっと痛い目見たほうがいいんだよ、探すな探すな。


捜索意欲は皆無である。

資料に添付されていた写真を見ると、イメージとは真逆。
色白、黒髪、丸メガネ。大人しそうな図書委員でございって面構え。

さっきまで、どうせウンコ髪のふしだら娘だろうと得意げに予想していた僕のブサイクづらが電車のガラスに反射し、なんとも言えない感情になる。

さてさて、この子が家を出てからすでに1日経っている。
引き落としも昨日。
早いとこ見つけねばね。危ないもの。


11:00 調査開始
とりあえず、繁華街のネットカフェやカラオケ店、ファストフード店で聞き込みを行う事にした。
なにも情報無し。
16:00 引き落とし情報
どうやら貯金の引き落としがあったらしく連絡が入る。
事務所「引き落としあったんで、ちょっと向かってもらいたいんですけど、、、」
僕「どこですか?」
事務所「大阪駅」
僕「え?」

すでに大阪に移動していたらしい。
とにかくめんどくさいが仕事だし、不良娘でも無かったし、何かあっても寝付きが悪くなるし、とかなんとか考えながら新幹線で大阪駅に向かった。

19:30 大阪駅
やっぱり、銀ダコの方がなんだかんだ言って美味いよね。
大阪に着いて、いきなりタコ焼きを食うがそんなもんである。

なにも情報がないまま聞き込みを回ること3時間。

22:30引き落とし情報
事務所「引き落としがまたあったんで」
僕「どこですか?」
(頼む!近くにいてくれ!疲れたんだ僕ぁ!)
事務所「北九州の○○駅」
僕「え、さすがに今日はいけませんよー」
事務所「もう泊まっていいので、明日朝一でお願いしますね」
僕「はい。」

僕が家を出てから14時間。
動きっぱなしである。
今からホテルを探すのもめんどくさいし、何より経費として請求できる金額が決められていて、その額がしみったれたガキの小遣いみたいな額なもんで普通に泊まると足が出てしまう。そんなことを考えると余計に憂鬱になる。
なんとか予算内できったないホテルをみつけてチェックイン。
湿っぽいベットに横になる。
天井に顔見たいなシミあって気持ち悪りぃなとか思いながらも明日は始発で北九州に行かならないので我慢して寝る。

5:00 チェックアウト
眠い。
7:30北九州○○駅
あのホテルで何か取り憑かれたかもしれん。
妙に身体が重い。それに、夢でタコ焼き屋の親父に「銀ダコがなんや!もう一度言うてみぃ!」と怒鳴られ、ボーリングの球くらいデカいタコ焼きでぶん殴られるという訳の分からない夢を見たせいなのかもしれない。

さっそく聞き込み開始。

12:30応援到着
調査員が1人合流した。
僕「いやーいないんだよなー。つか鉄板餃子食いに行かね?」
調査員A「いや、着いたばっかりだから(笑)」
僕「じゃー昼時だし飲食店見てきてよー」
調査員A「僕ぁ、ホテルでも回るからさ。」

といいつつ、なんだかやる気が出ない。
というか疲労困憊でロータリーにあるベンチから、かれこれ1時間動けていない。
というか、もう一歩も動きたくない。
そういう意思は固いのである。


13:40発見
ぼーっとしていると、200メートルくらい先に、あの娘が出て行った時に着ていたという服と全く同じ服の子、、、

「まさかね、、、」

と、思いつつビデオカメラで遠方から顔を撮る。

「あ、図書委員じゃん」

ついにみつけたのである。
というか、座ってダラけていた事が功を奏したのである。

すぐに事務所に顔写真を送り確認を取り本人であると確定した。

だが、めんどくさいことにこの娘に話しかける事も保護することも我々には出来ない。
そういう契約なのでここからは指示があるまでひたすら尾行することに。
応援の調査員も呼んで2人で尾行。

街をふらふらと目的も無く彷徨っている彼女。
ここで何か危険な目にあったり、見失ったりしたら大変な事になる訳で、こちとらいつもよりちょっぴり真剣。

16:30ようやく落ち着く
カラオケ店に入ったのを確認した後、事務所に連絡を入れる。

僕「いやー未成年なんで警察に保護してもらった方がいいですよこれ。
いつまでも尾行してられないですよ。何かあってもめんどくさいし。」
事務所「依頼者様に連絡してみますよ」

はぁーーー?
えええーーー?
なにしてたの今まで?
さっさと段取りくんどけや!
もうこちとら疲れてんねん!
帰ったらボーリングサイズのたこ焼きで頭どついたるぞワレェええええ!!!!
と、激昂してしまいそうになった。


やっぱり取り憑かれてたんだ。タコ親父に。

数分後、事務所から警察に保護の連絡が行き、まもなく警察が到着。
これで一件落着。警察に保護されパトカーに乗る彼女は号泣していた。
きっと不安だったのだろう。

ところで、彼女はいったいどこまでいこうとしていたのか。
この後どうしようと思っていたのか、、、
何はともあれ事件に巻き込まれなくて良かった。
これにて一件落着。

まぁ、彼女が家に帰ることが、本当に幸せなのかどうか分からないけどね。