注意 当、二次創作小説(シナリオ)を初めて読まれる方は先にこちらをごらんください。
あなたと始める物語は。36
〜 Leak out ~
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《ダーリンは芸能人》二次創作
そして翌日午前7時―――。
昨日の夜に今日の朝食を用意しなかったし、私もまだ摂り終えていないので自分の分も作ろうとヴィラへ早く行ってみることにした。
いつものように家事をしやすい服装に着替えて身支度をし、一人乗りの敷地内用電動カートでホテル本館からヴィラを目指す。
行きは緩やかな坂道を下るだけなのだけど、帰りは夜の道を登らなければならないのでホテルスタッフ用のものを借りることが出来たのはありがたい。
カートを駐輪場に停め、キッチンの勝手口から中に入ると、シンク前に誰かが立っていた。
一磨くんだ。
「愛優香さん?
おはよう。 早いね」
「おはよう。
いや、早いねはこっちのセリフ。 どうしたの?」
「ああ、目が覚めてしまってさ。 お腹も空いたから軽く食べようかと」
「そうなのね。 じゃ、何か作るよ」
「いや、愛優香さんの手を煩わせるのは」
「なに言ってんのー、これ、私の仕事だから。
ところで起きてるのは一磨くんだけ?」
「たぶん。 部屋を出てくるとき義人はまだ寝てたし、亮太と京介と翔は明け方まで起きてたみたいだから」
「あはは、その3人は昼まで寝てるかなー?」
素早くエプロンを着けて髪を纏めた後に手を洗い、準備に取り掛かる。
軽くでいいと言うので、作るのはフレンチトーストと生野菜サラダ、それからオニオンスープ、マンゴーベースのスムージーにした。
それらの材料と調理器具を補助テーブルに並べてお料理開始。
オニオンスープは昼食でも出せるから多めに作ることにしよう。
先ずは外皮を剥いた玉葱3個を半分にして、涙対策のために数分ほど水に浸し、引き上げたら薄切りにして電子レンジで加熱する。
と、一磨くんが手を洗い始めた。
「見てるのもなんだし、手伝うよ」
「うーん、じゃあ…」
手伝わせるのはほんの少しだけ気が引けるけど、電子レンジ加熱でしんなりとした玉葱をさらに柔らかくなるまで炒めてもらうことにしよう。
炒めてる間は何もできないんだよね。
「焦げないようにきつね色よりちょっと濃い色になるまで炒めてくれる?」
「わかった」
「その間に、と」
フレンチトースト用の卵液を用意したら火を付けずにフライパンに流し込み、適当な大きさに切った食パンを並べて染み込ませる。
次に生野菜を洗って一口サイズにし、その上に裂いたサラダチキンを散らして一旦冷蔵庫へ。
それから鍋に水と顆粒状のコンソメを入れて火にかける。
沸くのを待ってる間にスムージーの用意だ。
昨日買ってみた冷凍マンゴーとパプリカ、それからヨーグルトをミキサーにかけて、ある程度、滑らかになったらブレンダーカップごと冷蔵庫へ。
鍋のスープが沸いた頃、一磨くんの方を見ると玉葱がちょうど良い色合いに炒められていた。
「一磨くん、それ、この中に入れてくれる?」
「了解」
コンソメスープの中に琥珀色まで炒められた玉葱を入れてひと煮立ちさせ、そして最後に卵液がある程度染み込んだフレンチトーストをバターで焼いて完成!
「じゃあ、盛り付けたら持っていくわ」
「あ。 あの、オレと愛優香さんだけだしここでよくない、かな?」
……向こうのダイニングテーブルまでほんの数歩なんだけど、ここにはちょうど椅子も2つあるしね。
彼がそれでいいのなら。
「んー、そうね。 そうしよっか。
じゃあ、手分けして盛り付けよう」
「うん」
お皿とスープカップ、サラダボウルとグラスを出して、二人してそれぞれ自分の分を盛り付ける。
ハチミツとケーキシロップ、いろんなジャムや生野菜用にドレッシング、それからカトラリーセットを並べて席に着いた。
「「いただきます」」
二人して手を合わせ、軽めの朝食を摂る。
自画自賛になるけどフレンチトーストとオニオンスープは結構美味しく出来たし、スムージーも甘みと酸味が絶妙で、レシピの分量どおりに作ったからか初めてにしては上出来。
一磨くんも気に入ってくれたのか「美味しい」と言っておかわりしてくれてるし。
よかった。
「ところで愛優香さん、今日の予定は?」
「ん?
そうねー、とりあえずは洗濯したらお昼の準備をして―――」
「―――いい匂いがすると思ったら。
一磨、抜けがけ?」
その声にキッチンの入り口を見ると、京介くんが居た。
抜けがけ、とは?
あ、一人だけ先に食べてズルい、かな??
「お前、抜け駆けってなー」
「京介くんおはよう。 一緒に食べる?」
「おはよ、愛優香。
グラスのその黄色いの、なに?」
「マンゴーとパプリカのスムージーよ」
「それ、ちょーだい」
「ほかは?」
「入らなさそうだからいいや」
そう言いながら京介くんは一磨くんのお皿に残ってたフレンチトーストを一切れつまんで口に放り込む。
行儀が悪いなーと思いながら辛うじて一人分だけ残ってたスムージーをグラスに注いでテーブルに置いた。
「で、一磨、愛優香の予定を聞いてたけど?」
ん?
なんだ、この雰囲気は。
すると一磨くんは深くため息をついて言った。
「市場に行くなら車を出そうと思っただけ。
変な勘繰りするな」
んん?
勘繰りってどういう意味で言ったのかさっぱり分からず、目だけで二人を見比べる。
険悪そうでは、ない。
でもなんなんだ、この何とも言えない雰囲気は。
「ごちそうさま。
愛優香さん、車出しが必要ならいつでも言って」
「あ、うん。 ありがとう」
一磨くんは軽く手を挙げてキッチンを出ていった。
で、私は残った京介くんに尋ねる。
「ごはんどうするの? 食べるなら用意するし、まだ食べないなら、私、洗濯するけど」
「んー、もうひと眠りするー」
そう言って京介くんは欠伸をしながら出ていく。
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何をしに来たんだ、彼は。
…まぁ、いいや。
なにはともあれ、先ずはランドリーボックスに入っている彼らの洗濯物を片すことにした。
インナーとアウターを分け、さらにアウターの上と下に分けて順番に洗濯をしていく。
洗い終えた物から片っ端に直ぐ側の物干し用サンルームに干していった。
天井の半分は硝子張りになっていてお日さまがよく差し込むから、お洗濯物もすぐに乾くだろう。
全てを干し終えて私は大きく伸びをした。
〜 to be continued 〜