注意 当、二次創作小説(シナリオ)を初めて読まれる方は先にこちらをごらんください。
あなたと始める物語は。11
〜 re-start ~
★
《ダーリンは芸能人》二次創作
いまは有給休暇を消化中であり失業保険の給付金も受けるつもりなら、働き方によってはいろいろと面倒なことがあるために、正式な雇用契約は顧問弁護士と相談してからということになった。
そのため、ある条件の下でしばらくは無給でお手伝いという形になることを了承。
それでも短期間とはいえお家賃はゼロになるし、節約すれば生活費は何とかなる。
「本当にありが―――」
「ところで、姫榊さんは料理は出来るのかしら?」
突然、飯田橋さんが被せ気味に口を挟んだ。
オーナーも彼女の脈絡のない話に驚いた顔をしている。
「……はい?」
「料理、どれくらい出来るの?」
「姉さん、なに、突然」
「あ、あの、一人暮らしが長いんで、多少は?」
「そう」
突然ナニゴト?と思いつつも語尾を疑問形にして答えると、飯田橋さんはそれ以降は考え事を始めてしまった。
私とオーナーは顔を見合わせ、二人して頭を傾げる。
そして飯田橋さんはまたもや突然ブツブツと何かを言いながら、携帯電話を持ってベランダの方に向かった。
「あー、また何か突拍子もないことを思い付いたんだわ。 姉さん、そういうところがあるから」
「はぁ…」
「続きは追々。
姫榊さんもいろいろあって疲れたでしょうし、10日くらいのんびりしたら?」
「そう…ですね……」
「気持ちをリセットするのは大切なことだと思うの。
好きなことを思いっきりやるのも手よ」
「……はい!
今日はありがとうございました」
頭を下げて私は事務所を出た。
マンションに帰る道すがら、いろいろと考えた。
気持ちをリセットする。
うん、確かに。
幸せな結婚が手に入る直前で奪われ、与えられた職務を責任感を持って遂行するためにがむしゃらに働いたのに結果的には会社都合で追い出された。
そんな風に泣きっ面に蜂とも言える悲惨な出来事を引き摺ったままでは、新しく始める生活が楽しいものになるハズないよね。
幸いにも40日ある有給休暇を消化してそのまま退職するのだから今後会社に顔を出す必要はない。
プロジェクトから外された段階で引き継ぎも終わっているから突然呼び出されることもない。
私物は引き上げて身辺整理は終わってるし退職に関する書類は纏めて送られることになっている。
失業保険給付の申請をするにしてもそれが終わってから。
正社員としての次の職場を探さなければならないのは確かだけど、オーナーの言うとおり、少しだけのんびりするのもいいのかもしれない。
「ちょっとだけ…どこかに旅行しようかな」
少し心が軽くなった気がして、私は足取り軽く駅に向かった。
その途中、書店に寄って旅行雑誌を幾つか見繕って家に戻り、フレンチプレスでコーヒーを淹れながらのんびりと過ごす―――ハズだった。
いま私は、何故かとあるビルのとある会議室に居る。
隣には〈フローリストKM〉のオーナー。
対面にはスタープロモーション所属のアイドルグループ Wave のリーダーである本多一磨くんと飯田橋さん。
(これは一体全体どういうこと?!)
完全に頭の中はパニック状態だった―――。
〜 to be continued 〜