注意
当二次創作を初めて読まれる方は、必ず先にこちら をごらんください。
Staticeの花言葉とともに with 中西京介84
~ダーリンは芸能人・妄想2次小説43~
振り返って私を見下ろすその顔は、怒気を孕んでいた。
掴む力がさらに増し、骨の軋む音が聞こえる錯覚さえ起こして…。
「…どうしてあんな男に助けを求める? あの男はあなたにふさわしくないと言ったはずだ」
「っ! 誰が私にふさわしいとか、そんなの知らない! 私には京介くんしかいないの…! 京介くんだけなの!
京介くん以外いらない―――!」
「―――そう、ですか…。 じゃあ、仕方ありませんね…」
ゾッとするほど低く唸るような声でそう言ったあと、空いた手で懐から岡本さんが取り出したのは鈍く光る小刀。
「私もすぐに…後を追いますから」
その言葉が聞こえると同時に―――熱い火箸が押し当てられたような激痛に襲われて。
ややあって、生温かいものが体から流れ出すことに気付いた瞬間。
刺されたのだと理解する。
「……ふ、ふふ…ふは、はははははは……」
何がおかしいのか、何ともいえない笑い声が聞こえて私は岡本さんの顔を見た。
顔を歪めながら笑うその表情に背筋が凍る。
狂ってる―――…。
そう思ったのは彼の目に狂気が浮かんでいたからだ。
痛みよりも、死への恐怖よりも、それ以上に岡本さんの狂気のほうが怖くて…。
(…ここに京介くんがいなくて…よかった……)
こんな状況下でも、そんなことを思っていた。
かつてないほどの痛みのせいで意識を保つことも立ち続けることも難しくなっていって…。
だけど、意識が遠くなっていく中で聞こえてきたのは、大切な人の声。
「海尋―――!!!」
足に力が入らなくなって、膝から崩れ落ちる。
全身からも力が抜けていき、私は冷たい廊下の上に倒れた。
(京介くん…来ちゃ…だめ…)
そう叫ぼうと思っても、遠のいていく意識の中では声を出すことが出来ない。
消えかかる意識の中で見えた、京介くんに向けられた岡本さんの狂気になすすべもなく。
「海尋!」
「お前が彼女を穢した…! その罪を償え!!」
私の血を滴らせたナイフを振りかざして岡本さんは京介くんに襲いかかる。
「やめ、て―――!」
残る全ての力を振り絞って叫んだ。
と同時に激痛が体中を駆け巡る。
うめき声さえ出すのがつらい中、ナイフを持った岡本さんの脇を摺り抜けて京介くんが私の方に走ってくるのが見えた。
このあとに予想される事態に絶望を感じるしかなくて…。
(京介くん…!)
声を出そうにももう出すことが出来ない。
私に駆け寄る京介くん。
京介くんを追いかけてくる岡本さん。
全ての動きがスローモーションと化した。
「海尋…っ! 海尋、しっかりして…!」
私を抱き起こした京介くんの背中にナイフが振り下ろされようとして―――。
(神さま…!!)
目を閉じた瞬間。
「岡本やめろ…!!」
「は…離せ……!!!」
「何やってるんですか、岡本さん!!!」
聞こえてきたのは、複数の人の足音と怒声だった。
そして、何か大きなものが倒れる音。
周りが騒然となる中、私はついに意識を手放した―――。
~ to be continued ~