凍てついた部屋と、菊と百合
一瞬にして血の気が引いたあの光景が、否が応にも思い出される
お線香をあげ、手を合わせながら、隣室でタバコをふかすおじいさんを思う
何で、おじいさん残してっちゃうんさ
おばあさんがいなくなってからずっと、いつかおばあさんの惚気に照れてしまってたおじいさんが思い出されて、頭から離れないんよ
おじいさんがよういなおばあさんを好きだったか
何で、先にいっちゃうんさ
一緒にいけとは言わないけれどもさ、せめて別れと再会の時間は、短くしてあげんさいよ
何で俺から寿命を奪う事もしないで、愛する人を置いてっちゃうんさ
おばあさんらしくねっぺよ
あんたの事を愛してる人を置いてくくらいなら、俺と立場を交換してくれて、良かったのにさ
どうしてだよ
涙が止まらなくなってしまった
線香の煙と白い息とタバコの煙が、混じり合って、消えた
明日からまた、頑張らなきゃ。