臨床現場に勤務する医師の中には、「死」と病を異なるものとして考える人もいるようです。
そのような人達にとって、特に高齢者の老衰や病は積極的に治療すべきものではなく、死を目前に控えた患者さんには終末医療を施すべきであると考える人も少なくないようです。
終末医療とは、完治を目的とした治療行為を行なうのではなく、死を見据えた患者さん達に余生を健やかに暮らしてもらうために行なう医療行為です。
具体的には、身体的な痛みを薬によって緩和したり、逆に身体的苦痛に繋がる治療を中止する場合もあります。
回復を目的とした治療行為の中には、患者さんの肉体を傷付けるだけでなく著しく気力体力を低下させてしまう行為が存在しており、なかには治療行為で命を落としてしまう患者さんも少なくありません。
特に高齢者の患者さんであれば、例え病気が回復したとしても目前に迫る死を遠ざけることは出来ないのです。
そうした患者さんの中には、医師による治療行為を拒否する場合もあります。
従って医療現場では、死を受け入れる医療行為である終末医療の研究と周知が欠かせないものになってきています。一方人間は、誰しも「積極的」に死を求める存在ではありません。
特に患者さんの家族にとっては、出来るだけ医師による治療行為を継続してほしいと思っているものです。
もしも死を見据えた医療行為を決断する場合は、医師とよく病状に関する理解を共有する必要があることでしょう。
その病が本当に治らないものなのか、また治ったとしてもどのような結果が待ち受けているのか、説明が欠かせません。