中国労働人口、年内に減少へ
津上俊哉氏(現代中国研究家)寄稿
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20121227/241649/?P=5
中国の出生率に予想以上の急ブレーキがかかっている。中国政府は1.8と言い続けてきたが、最近の調査で1.18へ低下していたことが判明。現代中国研究家、津上俊哉氏がこれらのデータから推計した結果、労働力の中核を担う15歳から64歳までの生産年齢人口が、これまでの通説の2015年以降ではなく、2013年にピークアウトし、減少へ転じることが初めて明らかになった。
一人っ子政策で出生率を抑えてきたが、生活費が上昇する都市部で子供の養育は簡単ではない。急速な少子化で労働者が減り、賃金上昇が加速すれば、経済成長は一段と大きな壁に突き当たりかねない。中国の失速は、中国依存度が高い日本や世界経済へも甚大な影響を及ぼす。津上氏は以下の寄稿文で、仮に一人っ子政策を撤廃しても、それだけでは出生率の回復には力不足で、中国の将来に対する楽観的な見通しは大幅な修正が必要と指摘する。
2012年1月、中国国家統計局は「生産年齢人口の総人口に占める比率が2011年は74.4%で、2010年の74.5%から初めて減った」と発表した。わずか0.1%の減少ではあるが、私はこの内容を意外に感じた
2011年4月に中国の総人口(*2)が13億3976万人と公表された
中国で最も経済が発展している北京市や上海市は0.7強しかない。
この試算に基づくと、中国の総人口は2020年の13億6960万人をピークに純減に転じ、その後2030年までに約3200万人も減少する。これまで「総人口が減少に転ずるのは2032年」と通説のように言われてきたので、本推計によると10年以上も早まることになる。
中国では最近、権威ある書き手により、極低出生率を踏まえて人口政策の転換を訴える提言書が出版された(『人口形勢の変化と人口政策の調整』、中国発展出版社)。そこでは「合計特殊出生率は2010センサスでは1.18とされたが、調査の過程で生じる出生の捕捉漏れ(出生隠し)を考慮すると、出生率は1.5以下であろう」と曖昧な書き方をしている。
仮に真実の出生率が1.5であるのに、2010センサスの結果が1.18と出たとするならば、出生数の3割近くが調査から漏れている計算となる。実際、真実の出生率は1.18と1.5の間であろう。ただ、その数値がいくつであろうと、生産年齢人口の比率が既に下降プロセスに入り、総人口も2020年代の前半にピークアウトする大勢は動かない。
中国の生産年齢人口が上昇に転じたのは1970年前後だが、当時は労働集約産業の軽視や農村人口移動の制限のせいで、人口ボーナスを享受し損ねた。80年代後半からの改革開放政策により、沿海都市部が輸出生産拠点となり、出稼ぎ農民など内陸部の余剰労働力を受け入れた結果、今度は人口動態を上回る労働力が投入された。つまり、過去に取り損ねた人口ボーナスが加算されて、90年代後半以降の成長を「倍加」させてきたわけである。
また、この時期に子供の出生が急減したことで、国全体の子供養育負担が軽減した。輸出産業で得られた大量の雇用と子供養育負担の軽減は、貯蓄率を急上昇させ、並行して進んだ国内投資牽引型の経済成長を支えた。このように中国は過去20年間にわたり「人口ボーナス」を享受し続けてきたが、これからはギアがバックに入って「人口オーナス(重荷・負担)」の時代が来る。
津上俊哉氏(現代中国研究家)寄稿
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20121227/241649/?P=5
中国の出生率に予想以上の急ブレーキがかかっている。中国政府は1.8と言い続けてきたが、最近の調査で1.18へ低下していたことが判明。現代中国研究家、津上俊哉氏がこれらのデータから推計した結果、労働力の中核を担う15歳から64歳までの生産年齢人口が、これまでの通説の2015年以降ではなく、2013年にピークアウトし、減少へ転じることが初めて明らかになった。
一人っ子政策で出生率を抑えてきたが、生活費が上昇する都市部で子供の養育は簡単ではない。急速な少子化で労働者が減り、賃金上昇が加速すれば、経済成長は一段と大きな壁に突き当たりかねない。中国の失速は、中国依存度が高い日本や世界経済へも甚大な影響を及ぼす。津上氏は以下の寄稿文で、仮に一人っ子政策を撤廃しても、それだけでは出生率の回復には力不足で、中国の将来に対する楽観的な見通しは大幅な修正が必要と指摘する。
2012年1月、中国国家統計局は「生産年齢人口の総人口に占める比率が2011年は74.4%で、2010年の74.5%から初めて減った」と発表した。わずか0.1%の減少ではあるが、私はこの内容を意外に感じた
2011年4月に中国の総人口(*2)が13億3976万人と公表された
中国で最も経済が発展している北京市や上海市は0.7強しかない。
この試算に基づくと、中国の総人口は2020年の13億6960万人をピークに純減に転じ、その後2030年までに約3200万人も減少する。これまで「総人口が減少に転ずるのは2032年」と通説のように言われてきたので、本推計によると10年以上も早まることになる。
中国では最近、権威ある書き手により、極低出生率を踏まえて人口政策の転換を訴える提言書が出版された(『人口形勢の変化と人口政策の調整』、中国発展出版社)。そこでは「合計特殊出生率は2010センサスでは1.18とされたが、調査の過程で生じる出生の捕捉漏れ(出生隠し)を考慮すると、出生率は1.5以下であろう」と曖昧な書き方をしている。
仮に真実の出生率が1.5であるのに、2010センサスの結果が1.18と出たとするならば、出生数の3割近くが調査から漏れている計算となる。実際、真実の出生率は1.18と1.5の間であろう。ただ、その数値がいくつであろうと、生産年齢人口の比率が既に下降プロセスに入り、総人口も2020年代の前半にピークアウトする大勢は動かない。
中国の生産年齢人口が上昇に転じたのは1970年前後だが、当時は労働集約産業の軽視や農村人口移動の制限のせいで、人口ボーナスを享受し損ねた。80年代後半からの改革開放政策により、沿海都市部が輸出生産拠点となり、出稼ぎ農民など内陸部の余剰労働力を受け入れた結果、今度は人口動態を上回る労働力が投入された。つまり、過去に取り損ねた人口ボーナスが加算されて、90年代後半以降の成長を「倍加」させてきたわけである。
また、この時期に子供の出生が急減したことで、国全体の子供養育負担が軽減した。輸出産業で得られた大量の雇用と子供養育負担の軽減は、貯蓄率を急上昇させ、並行して進んだ国内投資牽引型の経済成長を支えた。このように中国は過去20年間にわたり「人口ボーナス」を享受し続けてきたが、これからはギアがバックに入って「人口オーナス(重荷・負担)」の時代が来る。