本学会は臨床心理学にたずさわる人々、及び、それに関連する人々の協同と連携により、人間尊重の理念にもとづいて現状の矛盾をみきわめ、自らがいかにあるべきかを志向しながら、真の臨床心理学を探究することを目的とする。

         2017年10月29日16時30分時点の日本臨床心理学会会則第3条(目的)

 

2014年11月15日の東京大会終了後の夕方から、定期総会が開かれました。

参加者は、現職の執行部委員と元執行部委員と監事の他、一般会員が1名の計12名の出席でした。

この総会では、あらたに、会員除名条項を会則に付け足す議案が審議され、「永久除名」の規定を加えることが可決されました。

 

こうして、冒頭の会則条項「(目的)」に記されている、「協同」「連携」が行われることが、あやぶまれるようになり、「現状の矛盾をみきわめる」ことがさけられるようになり、「自らがいかにあるべきか」ではなく、権力のある立場の人々の「志向」を忖度することが、強いられるようになってしまうかも.....。

そんなおそれのある、「永久除名」会則条項が、新たに作られてしまいました。

 

 

薬に頼らず、つまり、製薬会社などの世界資本の圧力や利権から距離を置いた、こころの支援の方法を探し求める研究をしてきた方向性は、すでに、その前の定期総会つまり2013年の8月10日の役員選挙の結果、排除されてしまっています。

 

昨日更新したホームページで書きましたように、20期の編集委員長と新たに立候補した人たちが、この「No! 向精神薬」を主張する方向性に賛同していたことも、根回しの組織票で不信任となった理由の一つのだと思われます。

ちょうどこの1ヶ月前に、さんざん内部からの妨害に会いながら、なんとかこの総会と同じ会場で開催したのが、この↓精神医療被害連絡会代表中川聡さん(この後、日本臨床心理学会に入会)が講師を務めていただいた研修会でした.....。

http://nichirinshin-o.sakura.ne.jp/wordpress/催し/研修会/

 

 

日本臨床心理学会が、大連での国際大会での交流の成果も踏まえて、さあこれから、日本の風土に相応しい、民俗学的・医療人類学的「臨床」の在り方を調査研究して実践に活かそう!!......としていたことが、このなんだか詰まらない政治的?「排除」工作によって、すっかり中断されてしまったのです。

 

これじゃあ、また、ヒアリング・ヴォイシズの二の舞じゃないですか....

今注目されているオープン・ダイアローグが日本に紹介される更に20年以上前のヒアリング・ヴォイシズの導入が、いま現在、ほそぼそとしたものになってしまっています。その理由を、医者が受入れなかったから、とかと責任転嫁している人もおられますが、実際は、その人たちが自らもみ消したのですから、よく言うわと思います。

https://ameblo.jp/slapp-nyan/theme4-10103169697.html

(ヒアリング・ヴォイシズ運動の日本での様相は、この頁ほか「ヒアリング・ヴォイシズ」のテーマの頁をご覧下さい。)

 

 

この20期役員有志のチャレンジも、日本の臨床心理のこれまでの輸入舶来のやり方を有り難がるあり方を打開できる着眼点が生かされる機会を、またまたこの学会は失って(いや、失わされて)しまったのでした。

 

日本心理臨床学会というよく似た名前の別の大きな学会があります。

この日本心理臨床学会は、日本臨床心理学会から分派していった当初は、元の日本臨床心理学会に残留した(当時)若手の医療保健福祉等の現場の人々から、「第二学会」などとさげすまれて、手厳しく批判されていました。

それが、河合隼雄さんの大活躍で「臨床心理学」ブームとなり一旦は河合さん側が圧倒的に優位に立っていました。ところが、河合さんが脳梗塞に倒れる少し前ぐらいから、日本臨床心理学会(を「乗っ取っ」ていた全心協)は、親方の日本精神科病院協会だけでなく日本心理学会を味方につけ、力関係は(密かに)逆転しました。

そして、42条2項(医師の指示に従う義務)への、故河合隼雄さん側(「臨床心理士」側)の懸念表明を無視して蹴散らし、晋精会(安倍晋三総理を応援する日本精神科病院協会で作っている政治団体)の後押しで、めでたく公認心理師法案が通ったというわけです。

 

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このブログで度々お話してきた、10年前に亡くなられた元文化庁長官の河合隼雄さんは、長年この日本心理臨床学会のトップリーダーでした。

河合さんは、「心理療法は、宗教と科学の接点にある」という思い切った定義をはじめ、仏教と心理療法の共通性や日本の昔話から日本人のこころの特質を読み解いていくなど、日本独自の心理臨床の研究を広めることを提案してこられました。

 

そして、ちょうど2015年7月、公認心理師法成立の前に、一冊の本が出ます。

河合隼雄さんが長く教鞭をとってこられた京都大学大学院を出られた東畑開人さんの『野の医者は笑う』という、医療人類学・民俗学と臨床心理学をつないだ著作です。この本はアマゾンでもかなり評判が高く、話題を博しています。

このような河合隼雄さんが築いた方向性が新たな実を結び、「臨床心理士」の独自性をあらためて主張できる可能性がこの本の中にあると、私にも思われました。

 

 

そうです。日本心理臨床学会が中心として、創られたのが、「臨床心理士」という民間資格でした。この資格が出来てからは、民間資格であるとはいえ、この資格を取った人の多くが、医療、教育、司法、福祉等の心理職として働くようになりました。

 

ですので、もしかしたら、日本的な心理臨床の在り方の探究をしたいと言うだけで、この河合隼雄さん派に「乗っ取られる」のではないか、...と、ここ20年以上医療現場での地位の確立を目指した労働運動を頑張ってきた人たちは、心配したのかもしれませんね。

 

けれども、20期で、宗教的、民俗的な癒しを研究テーマにしたシンポジウムや大会のメインプログラムを企画した私たちは(少なくとも私は)、いま思えば、とても楽観的でした。つまり、心理職の生活の向上のための労働運動と、この学問の境を超えた幅広い研究が共存できる、と思っていたのです。

 

私たちは、日本臨床心理学会のこの「(目的)」を、多様性(ダイバーシティ)を受け入れてきた、ふところの深さの証しだと、信じていたのでした。

 

でも、その期待と信頼は、あっさりと裏切られてしまいました。

 

 

多数決での信任投票の決定は、それが、総会に出席しなかった(つまり白紙委任した)会員の人々の最大多数の意見であることが確かであるのなら、私は受入れることができます。

 

けれども万一、その不信任の選択が、偏った情報に導かれての結果であれば、泣くに泣けません。それに、この定期総会資料として全会員にメールと郵送で配布した議案書に添付した事務局長報告が、次期運営委員会が編集した定期総会報告からは大幅に削除され、度重ねての抗議に対しても鉄壁の黙殺をされてしまいました。

 

そのため、私は諦めきれずに、再度、2013年8月10日の総会に出席されなかった会員の本当の気持ちを知りたい、その審判をあおぎたいとの思いが強まるばかりでした。

 

21期の編集の在り方には、著作権侵害の疑いもあり、弁護士に相談して抗議するも無視されたため、致し方なく、購読会員(図書館等)に、雑誌の配架を控えてもらうようにお願いの葉書を出したことが、「学会の名誉棄損」として、「永久除名」「学会会務への重大な妨害」とされる理由の一つにされました。

 

そして、翌年の定期総会1ヶ月前の2014年10月18日から総会当日の11月15日まで、会員に向けてメールを送付しました。

その内容は、運営委員会の中でどのようなことが生じていたのか、について、前20期の事務局長の立場から、私の記名で送ったものでした。

この内容について、会員からの公正な判断を持ってもらいたいと願うばかりでした。

 

なぜこのような思い切ったことを単独で行ったかというと、万一学会初の「除名」を規定する第4号議案が可決されるなら、この日本臨床心理学会の未来には「人間尊重」の「理念」が踏みにじられる危険性が生じるという危機感があったからです。

 

そして、「除名規定」は、12名の会員の多数決によって成立しました。

https://ameblo.jp/slapp-nyan/entry-12310622883.html

 

 

.......さて、今年2017年9月29日、本年度の定期総会では、会則の大幅な改訂議案が提出されています。「誰でも入会できる学会」ではなく、新たに入会に制限を設けることが提案されていたことは、すでに書きました。

会則改訂案はそれだけではなく、多くの条項におよび、なんと、この「(目的)」までも、変えられようとしています。

 

改訂案A

本学会は臨床心理学及び臨床心理支援にたずさわる人々と当事者を含む様々な立場や分野の人々との恊働・連繋・交流を促進し、現場での諸矛盾を受け止めながら、対人支援、集団・組織の諸課題に対して自らがいかにあるべきかを絶えず問い続け、臨床心理支援における「臨床的方法」とは何かを探究することを目的とする。

 

改訂案B

この会は、当事者を含めて臨床心理の実践とその学にたずさわる人々と、それに関連する人々の恊働・[ママ]と連繋と交流の促進に務め、対人援助・支援及び集団・組織の問題解決における現場での諸矛盾を認め、それらを規制枠との学問分野を超えて臨床心理(学)自信が自らを問い直すことができる資源として生かしながら、よりよい臨床心理援助・私怨としての臨床心理学を探究することを目的とする。

 

う〜ん。永久除名されちゃった立場で、言うのもなんですが、これらの書き換えが、いったいどのような意図でなされているのか、滝野さん、亀口さん、谷奥さんからの説明をしっかりとこの耳で聞きたかったなあ....。

 

それにしても、審議でまずは、改訂を行うか否か、そしてこれら2案の何れを採択するのか、これだけで、総会の時間のほとんどが議論に費やされるのが、あたりまえだと思うのですが。

実際はどうだったのでしょう。総会後の懇親会から出席された、又吉正治さんのご報告からは、総会は滞り無く時間通りに終了したことがうかがわれました。