本ブログでお知らせしてきました、京都修学院での学際研修セミナー、いよいよ今週末、16日(金)17日(土)の両日となりました。

 

2日目、17日の午後からは、医療領域における「発達障害」概念がはらむ問題を巡って、同時間帯に2題の、それぞれに重要な企画が催されます。

 

1題は、基調講演 

https://taikai2017.jimdo.com/高木俊介さん講演会-公開シンポジウム基調講演/

と、公開シンポジウム「公認心理師は『発達障害』をどにに導くのか?」です。

https://taikai2017.jimdo.com/公開シンポジウム-公認心理師は-発達障害-をどこに導くか/

 

もう1題は、特別企画:「黒川・江端の主治医ー患者対談」です。

https://taikai2017.jimdo.com/黒川-江端の主治医ー患者対談/

 

 これら午後のメイン企画に先立ち、同日午前には、大会長による書評に基づく議論の提起と、発達障害に関わるものとして公募した、口頭発表です。一般および会員からの発表申し出や問い合わせも複数あったのですが、限られた時間内で可能な限り有意義な議論を果たし、午後の催しへの有機的な繋ぎとしたいとの趣意で、今年度は、社外からご応募の山崎真也さんの一題に厳選させて頂きました。

 

山崎さんから頂いております要旨を、さらに私見にて以下に概略します。

 「自閉症スペクトラム障害」という「病」の極端な増加は、障害そのもの病そのものが増えているわけではなく、診断し命名する「概念」が拡張したからである。その「概念の拡張」は、99%、政治的に仕組まれたものである。

 この主張の裏付けとして、未邦訳を含む複数の海外文献に基づく精緻な論証を展開して頂けると思います。

 

 午後からの催しに参加ご予定の方で、もしも午前からもご都合がつかれる方は、ぜひとも、午前10時半からの部からお越しくださいませ。

(※臨床心理士資格更新ポイントの申請につきましては、午前と午後の双方にご参加の方が対象となります。)

 

以下に山崎さんの、発表要旨(注記は割愛)を転記します。

 

 

「自閉症スペクトラム概念の拡張に関する批判的一考察」

                                                      前進友の会会員・大阪府立大学客員研究員

                                                                                                   山崎真也

 

2011年、韓国のKimらは、ASSQを使用した大規模調査で、人口の38人に1人(有病率:2.64%)が自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断されるという驚くべき研究結果を公表した。ASD有病率の上昇は各所で報告されている。本発表は、こうした疫学調査や臨床現場の実践、通俗的な「発達障害」流行の背景に、Wing以来のASD概念の拡張が存在すると仮定し、概念史的・倫理的観点からこの現象の批判的検討を試みる。

発表では、まず反面教師として、昔日の統合失調症概念にみられた拡張現象の機制とその倫理的帰結に言及する。特にBleurerの潜在性統合失調症概念と、米国で見られた「思考障害」の有無への着目が、統合失調症概念の実質的拡張を招来した旨を確認する。

次に、近年のASD概念の形成や運用に同型の現象が再現されている点を指摘する。その際、ASD概念は「政治が99%、科学は1%」の賜物であるというHackingの主張を考慮しつつ、Wing以降顕著なASDの拡張現象に孕まれる倫理的帰結を考察したいと考えている。

 

 

🍀注記を含む山崎さんの要旨全文は、以下に掲載されています。

https://taikai2017.jimdo.com/一般公募口頭発表-大会長話題提供/