さて、強情な犬にやっと慣れてもらった話の続きです…

平良第一小学校時代⑬の話


”動物を飼う”ってゆーか、犬ってゆー家族が出来たって事はこんなにも楽しいものか!
朝早く起きて、犬と散歩に行って、朝飯食って、登校前に犬見に行って♪

朝飯・夕飯もエルがいる場所で一緒に食ってた。
さすがに一緒に眠ることは出来なかったけど、夜中こっそり覗きに行っても俺の気配を感じてすでに尻尾を振って待ってました。

”子犬の頃から愛されていた人間に一度捨てられ、人間不信になったけど、またこの家の人間を信じてくれた”。
特に俺の事は無条件に受け入れてくれたエル。

ベッタリでした…いつも。

さて、大事な授業と引き換えに出来上がった犬小屋の設計図。
この時点で学校の友達等に初めて”エル”がウチに来たことを話した。
そして犬小屋建設にあたっての”作業員”を募ったところみんなが協力してくれた。

いつものよーに資材は建築現場から失敬して来て。図面どおりの資材が揃ってやっと作業にかかる。
初めはエルも俺の友達を警戒して唸っていたが、すぐに慣れて皆になついていた。
それを見て俺は”何で俺の時と違うんだよ”って、エルに嫉妬してたけどね。

今まで”秘密基地”や”鳩小屋”などさんざん建設してきたので、それなりに仕上がったグレードは
……一緒だった。
隙間があったり、屋根が斜めではあったがデカい小屋ができた。

エルが小屋の中に入ってくれるか心配だったが、パっと入ったかと思うと小屋の中でグルグル走りまわってた。気に入ってもらってよかった。不細工な作りだけど気に入ってもらった。

エルは前の飼い主がキチンと躾をしてたので、俺なんかよりとっても行儀が良かった。
母ちゃんが俺とエルを比べてて、俺が負けた。テメエ(エル)、やっぱりセレブか!
お手。お座り。お預け。待て。行け。

散歩しても前にグイグイ行くんじゃなくて、俺の歩幅に合わせて歩いてくれた。小さい子供には絶対に吠えない。散歩で出くわした他犬に吠えない。落ちてる食い物に反応しない。
番犬時、知らない奴が来ると吠えるが、ストップというと止む。
俺なんかより、とっても”ジェントルマン”♪

エルといると色んな勉強(犬系)になった。
”犬がウンコしたいしぐさ””ウンコするカッコ”。”オシッコがもれそうな時””寂しいとき””嬉しいとき””怒られて反省してるとき””飯が不味かったとき””気持ち良いとき”あと…なんだっけ?




……こんなにエルが大好きだったのに。


……俺は…

1年後、だんだん俺はエルの世話をサボるようになってた。
汚れた餌のプレート。水の入ってないボウル。風呂に入れる回数も減った。ブラッシングもしなくなったので、エルは毛玉だらけ。小屋の中も掃除しないから夏場は臭いがでた。

母ちゃんに何度もドナられた。その時だけ世話をした。
そんな俺だのに、エルは世話をしに来た俺を見て嬉しそうに”あの時の表情で”、尻尾を目一杯振ってくれた。

中学に入って部活をする頃にはすっかりエルの世話は母ちゃんがしていた。もともと母ちゃんは少し動物が苦手であったが、”俺に捨てられたエル”を見かねてエルを風呂に入れ、小屋を掃除し、エルを清潔にしてあげていた。

この頃エルと母ちゃんには目が合わせずらく、約束を破った事とエルを事実上捨てた事に対して後ろめたかった。

部活が終わり、日も暮れ帰宅した。
帰宅すると犬小屋にエルが居なかった。

世話をしない俺なのに、俺が家に近づくといつものように俺の気配を感じて犬小屋の前でグルグルまわって出迎えていたエル。

そのエルがどこにも居なかった。

家のまわりのどこかに繋いだんだろーと思い、家のまわりを見てみる。居ない…。

「母ちゃん…エルは?」
「……………」
「エルはよぉ?」
「……………」
「母ちゃん!」

「お前がエルの心配をする資格があるの?」
「…………」
「約束…覚えてるよね。それにアンタは無責任だから生き物を飼う資格無しっ!」
「じゃエルはどーしたの?」
「アンタが学校に行っている間に”業者に処分してもらった”」

…………処分……


何とかならないのか。俺が悪かった。どこの業者だ。ちゃんと世話をできてなかった。
もう死んでいる。母ちゃんは強引過ぎる。ずっとエルは俺を見ていた。一緒に飯食った。
憎たらしい奴。この野朗、噛み付きやがった。この家にずっと居ればいい。…………

空っぽの犬小屋。街頭に照らされている汚れたプレートとボウル。エルの首輪から外されたままの
チェーン。エルの毛玉がころころ転がっている。エルの臭い。

大きく深い後悔。時間を戻したい希望と願い。重く圧し掛かる大罪。
無責任無責任無責任無責任無責任無責任。裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り。

視界が歪み、鼻みずがしたたる。自分に対して腹立たしくて、視界が歪む。したたる。

エルは一度人間に捨てられ、それでもまた人間を信じたのに、また捨てられて、信じた人間に殺された。
裏切って殺したのは俺………裏切って……殺した……俺。





あれから数年経って…



俺も社会人になって、島に帰った際に

母ちゃんと酒飲んでいる時”俺の無責任”の話からにエルの話になった。

「母ちゃん、何も殺させんでも良かったのに。俺が言えた義理じゃないけど…」
「あれ?ウチ言ってなかった?」
「何が?」
「あ…言ってなかったか。エルを業者に渡したのは嘘♪」
「嘘ぉ?じゃどーしたの?」
「エルは別の家が欲しいといっていたから、あげたさぁ~」
「じゃ死んでいなかったの?」
「そうよ。でも新しい家に慣れるまで時間かかったかもね。でもアンタにも反省して欲しかったし~」


この…酔っ払いオバハンっ!!!

でもエルは生きていた。俺が言えた義理じゃないのはわかってるけど。生きていた。



今の俺にはっきりとあるもの

生きている物(者)、命との向き合い方。
強者は弱者に対し”情”だけではなく”責任”も持たなければいけないこと。
この2つが絶対に無ければ弱者の上に立つことや生き物を飼うことはしない。

エル…ごめんな。裏切ってごめんな。
いろいろ教えてくれてありがとうね。
最後まで責任を持てなくてごめんな。



学校の勉強より勉強になった♪
皆サンは今も”愛せて”ますか?最後まで”愛し”ますか?

え~ではそろそろ昨日の”犬話”の続き

平良第一小学校時代⑫の話


エルがウチに来て1日目の朝。
母ちゃんが準備した朝飯を持って奴のとこへ向かう。
で、俺の姿を見るなり…

「ウゥ~…ウゥ~」

ちっ!可愛げの無い。
近づくと昨日の晩飯が全部そのまま残っている。水も減ってない。
上等だ!食わないなら食わなくてけっこう。根性見せてもらおーじゃないの!
とりあえず持って来た朝飯を置いた。

その日、学校へ行っても奴の事が頭から離れない。
いつものことだけど、その日は特に授業はウワノソラ。
ちきしょう…。

学校が終わると、友達の視線から逃げるよーに教室を出て家に帰る。

家に着くとエルは軒下の影に伏せていたが俺の姿を確認すると…

{ウゥ~ウゥ~」

唸ることしか脳がないのかよ、全く…ん?なんだよ朝飯もそのまんまか。
太陽にさらされてカピカピしてる。水は減ってはいるけど、多分蒸発したからだろう。

家に入り母ちゃんに聞ーた。

「母ちゃん、エルは朝飯も食べてないよぉ。水も飲んでないはずよぉ」
「慣れるまでは食べないはずよぉ~。でも水は飲んだほうが良いけどねぇ、この暑さだし。」

初めて知った!
野生じゃなく、ちゃんと飼われていた犬は”しらない人間からの餌や拾い食い(ゴミ漁り)をしない”らしい。

……2日目の朝
俺の姿を見ても立ち上がることはなくなったが、唸ることもなくなった。
水は少し飲んだ感じだったけど、昨夜の晩飯は全部残ってた。
とりあえず刺激しないように持って来た朝飯をそっと置く。

そんなに元の家に帰りたいかよ?あの家にお前の居場所は無いのに。この家は嫌か?
とてもとても悲しくなった。不器用なエルを腹立たしくも思った。

その日も学校から帰ってエルのとこへ…
朝飯は……カピカピ。

……3日目の朝
今日も母ちゃんが準備した朝飯を持ってエルのとこへ。
いつものよーにそっと朝飯を置こうとすると…エルが立ち上がった。
瞬間ビビった俺は後ろへ身を引く。

最初エルは朝飯の匂いをクンクン嗅いでたが、すぐにガツガツと食った。エルがこの家で初めて飯を食った。ガツガツガツガツガツ…

そっとエルのそばに行き、背中を撫でてみようとすると、一瞬俺の手を振り返って見てたがすぐに食事を再開した。ちょーしに乗った俺は登校する時間だけどエルの体中を撫で回してた。

学校ではいつものとーりに授業はウワノソラ。
でもここ数日の感じとは違う。愉快愉快♪
ノートや教科書の余白には”犬小屋の設計図案”が書かれ、6時限目には設計図は完成してた。

ホームルーム終了。
速攻で教室を出る。3年の校舎裏の石垣を乗り越え、いつもの近道コース。途中友達に会って遊びに誘われたがアホ話して軽くスルー。

家に到着!

俺を確認したエルは立ち上がっている。
近づいて頭を撫でた。唸らない♪
体中を撫でまわした。尻尾を振っている♪
抱きついてみた。尻尾を高速回転で振っている♪

朝飯が入ってたプレートは綺麗に舐めつくされ、水が入ったボウルも残り少ない。

この日エルは俺の家で暮らす決心をしたんだと思う…


◇◆◇◆◇◆続く

さっき見てた犬の里親のブログを見て思い出しました。

はい…飼ってました。犬…


ってな訳で…

平良第一小学校時代⑪の話…



学校から家に帰ると犬が居た…

「ウゥ~ワンワン。ウォォ~オン!」

何だ?ドコの犬よ?それも映画の中でしか見たことないよーなセレブ系。
…にしても俺はここの住人だ。お前なんかに吠えられる覚えはないっ!
カチンときて、その犬をガン見しながら家に入る。

「母ちゃ~ん。何か?あのンギャマス犬(うるさい犬)」

「だぁ~説明するから、こっち来てごらん」

母親とキッチンのテーブルに腰掛け、経緯を聞かせてもらう。
なんでも母親と親しくしてるご夫婦がいて。そのご夫婦は長年”子宝”に恵まれなかったらしい。そこで寂しさを紛らわせ、擬似育児体験も含め子犬のシェルティ(コリーの小型犬)を飼い始めた。

その子犬は夫婦の愛情を受け、すくすくと育つ。旨い食事、快適な室内、毎日の散歩、休日は満足するまで屋外で走りまわった、日々のブラッシング、数日おきのお風呂…最高の環境と愛情にかこまれて…

……いたはずなのに。

神様が用事を思い出したかのように、子宝に恵まれなかった夫婦の”願い”を叶えてくれた。
月ごとに大きくなるお腹。
月ごとに愛情を受ける比率が変ってくる、犬と胎児。

「やっとできた赤ちゃんだから、犬の毛が赤ちゃんの喉に詰まったり、犬の病気が赤ちゃんに感染しないかとか…色々心配だけど、ずっと可愛がってきた犬だから知らない人にあげるより、知っている私に引き取ってもらえないか?と、さっき夫婦で来てたわけさ」

なるほど。あの野朗(犬)、行き場所の無い可愛そうなやつなんだな…。

「どぉ?アンタ面倒見れるね?アンタが面倒見れない、好きじゃないというなら、あの犬は返してもいい条件なんだけどさぁ」

俺の考え次第…か

「上等さいがぁ(良いじゃん)!可哀想だし、ウチで飼おう!」
「わかった。じゃ、ちゃんと散歩もお風呂も食事も面倒みなさいよ」

さっきまで憎らしかった奴(犬)だが急に愛おしくなって、奴がくびられてるトコに行く。
とりあえず挨拶代わりに何か食い物でも持っていってやろう。
俺の姿を見た”奴”はスクと立ち上がり、歯をむき、唸り出す。

「ウゥ~…ウゥ~…」
「ポチ、ポチ。大丈夫!何ぃ~もしないよ。餌持って来たどーや。うり!食べれ」

「ガブッ!」

俺の手に奴の歯が思いっきり食い込む。ショックで尻餅をついたが、左手を奴の脳天に振り降ろし
奴を離す。

「あのさ~その犬まだ慣れてなくて、噛み付くかもしれんからあまり近づかんほーがい~よぉ」

母ちゃん、アドヴァイスありがとう。
今、噛まれました。

「母ちゃ~ん、この犬の名前はぁ~?」
「エ!ル!」

なるほど…エルって名前かよ。俺がポチっつったのが気に食わなかったんだな…。

俺とエルは絶妙な”間合いで”その場で睨み合う。
俺はエルになめられないように…少し「ニヤリ」。
エルも俺になめられないように…少し「ニヤリ」。


これがエルと俺の出会いでした…。


◆◇◆◇◆◇続く……