健康維持には睡眠が重要との意識の広がりを受け、快眠関連商品が充実してきた。自分に合った商品を見つけ、就寝環境の改善を目指す人が増えているためで、関連市場の活況が続いている。(日野稚子)
◆動物に例えて
家具・生活関連商品販売店のイケア船橋(千葉県船橋市)のマットレス売り場には23台のベッドが並ぶ。同店寝具担当の斉藤久子さんは「寝具が合わないという自覚の中で、もっと良い睡眠をしたいとの希望を抱える人が増えた」と話す。寝心地を試していた同県浦安市の男性会社員(52)もその一人で、「最近、夜に何度も起きてしまい眠りも浅い。マットレスも古くなっているので変えようと考えた」。
マットレスだけを見ても、スプリング入りや形状記憶、高反発といったポリウレタン製フォームなどの構造、表地の素材、硬さなど選択ポイントは多い。自分に何が合うかの目安として、斉藤さんは「あお向けや横向きなどの寝姿や硬さの好みもあるが、立ち姿と同じ姿勢を維持できるマットレスがいい」とアドバイスする。
国内6店舗を運営するイケア・ジャパンは店舗の寝具関連売り場を一新したほか、日本向けに構造そのものを見直したマットレスも扱っている。PR担当の村田有紀さんは「睡眠に注目が集まっている。寝具や寝室の改善で対処できるとの提案を続けていく」と話す。
オムロンヘルスケア(京都府向日市)の「ねむり時間計」シリーズは、寝ている状況を計測するための小型機器だ。枕元に置くと就寝中の寝具の動きを感知し、寝返りの回数も計測。寝付くまでの時間やぐっすり寝ている就寝時間など睡眠の深さをはじき出す。データはスマートフォン(高機能携帯電話)や専用サイトで見ることができる。平成24年5月の発売後、30、40代から支持を集め、1年間の販売目標を約2割上回る10万台弱を売り上げた。
男性には起床時間から30分前までの間で目覚めやすいタイミングにアラームが鳴る「スッキリアラーム」機能が人気で、女性からも就寝中の眠り具合を美容に活用できるとの声が多い。データを基に快眠に向けた改善策を知りたいとの要望が多く上がったことから、今年6月には後継機種(HSL-002C、実勢価格6500円前後)を発売。1週間分の測定結果から眠りの傾向を9種類の動物に例えて判定し、改善点を提示する機能を加えた。
◆すっきり感
手軽に寝付きや起床時のすっきり感をサポートするのが、線香を手掛ける日本香堂(東京都中央区)の「アンミングプラス」シリーズだ。睡眠専門医の監修で、心身の緊張をほぐすリラックス効果で知られるベルガモットやオレンジなど柑橘(かんきつ)系を中心に香りを調合、入眠だけでなく、寝覚めもサポートする。リネンミスト(1575円)とバスエッセンス(2100円)の2種類あり、リネンミストは枕にスプレーして使う手軽さが受け、24年10月の発売後、3カ月で約1万本を販売。使い勝手を求める要望に応え、1回分に分包したバスエッセンス(263円)も11月に発売する。
日照時間の短くなるこれからの季節は気温も下がり起床もつらくなりがち。快眠を求める人向けの商品開発は続きそうだ。
■適切睡眠は7時間が目安
日本睡眠学会理事で睡眠評価研究機構の白川修一郎代表は「8割の人が何らかの問題を抱えているが、温度や騒音・振動、臭いに影響を受ける睡眠環境に対し、軽視する人も多い」と指摘する。
睡眠の健康への影響は多岐にわたる。適切な睡眠が不足すると、高血圧では約1.9倍、日本人に多い2型糖尿病は2.23~2.98倍にまで発症リスクが高くなる。一方、睡眠が足りていれば意欲向上や抗鬱症状の改善が見られるという。
白川代表は「7時間を睡眠時間の目安にしたうえで、寝不足になったら数日以内に解消するよう心掛けてほしい」と話している。