これはある不器用で鈍感な少年と気が強く自分に素直になれない少女の物語
物語は二人が高校に入学時したところから始まる。
入学式が終わった。少年は新しいクラスに同じ中学出身者がおらず最初は戸惑ったが何とかクラスのグループに入れて幸先のいい高校生活をスタートした。
入学してから約1ヶ月が過ぎ学校にも少しは慣れ始めた頃・・突然校内で
「おい!○○(少年の名前)」
名前を呼ばれた。振り向くとそこにはショートカットの見るからに気の強そうな雰囲気の女子が立っていた。
彼女は言った。
「あのさ…アンタ私に話かけんといてくれへん?あと私に近寄らんといて!」
彼女は言いたいことだけ言うと去って言った。
はぁ
話かけんなも何も自分から話しかけてるやろ
大体何で俺の名前知ってんねん
ってかそもそもお前は誰やねん

彼女とはクラスが違うため、それまで面識はなかった。
後で判明したが彼女の名前は「千鶴」といった。
それからというもの千鶴は何かにかけて少年に絡んできて憎まれ口を叩いた
「アンタ、私に近づくな言うたやろ!」
「何で私の居るとこに来るねん!」
少年の方から千鶴に絡んだことは一度もなく100%絡んでくるのは千鶴の方からだった。
少年はそんな扱いをされるのは慣れており相手にしなかった
しかし無視を続けると千鶴の絡みはエスカレートしていった
流石に少年も堪忍袋の緒が切れて言った
「お前ええ加減にせえよ!絡むなて毎回自分から絡んでくるやないか!うっとーしいねん!」
千鶴は面食らって一瞬怯んだ
少年は続けた
「お前もしかして・・俺のこと好きなんか?それでかまってほしくて俺に絡んでくるわけ?」
しばらく沈黙が続いた・・
千鶴は黙ったまま顔を高潮させて無言で走り去った
「何やねんアイツ?意味わからへんわ」
それから千鶴は少年に絡むことがパッタリなくなった。むしろ避けるようになった。
だか少年は特に気に止めなかった。
そして季節は冬・・バレンタインの時期が近づいてきた。
当時からまったくモテなかった少年は自分には関係ないものと思っていた。
そしてバレンタインデー当日
校内はざわついていたが気にせず下校しようとした時・・背後から誰かに突然腕を掴まれた。
驚いて振り向くとそれは千鶴だった。
「いや、何なん?」
抗議の声を無視して強引に校舎裏まで連れていかれた。そして周囲に人気がないのを確認すると紙袋を差し出した
「・・アンタどうせ誰からもチョコレート貰えんねやろ?これ余ったからあげるわ!」
少年が紙袋を受けとると立ち去ろうとした。
声を掛けよとした時・・千鶴が一瞬こちらを振り向いた
え・・・
その時の彼女はとても悲しそうな顔で・・泣いていた・・
何か言いたそうにしながらも無言で逃げるように去っていった。
「何なんや一体・・?」
自宅に帰って紙袋を開けると手作りと思われるチョコレートが入っていた。
口に入れるとほろ苦い味が広がる
美味い
とりあえずクッキーの詰め合わせを買ってホワイトデーのお返しをすることにした
ホワイトデーは春休み中なので終業式の日に渡す予定だった。
そして終業式当日
千鶴の教室に行ったが彼女の姿はなかった。
不思議に思い同級生に聞いてみると
「あーなんか急に学校辞めたらしい。先生もよう事情わからんらしいで」
ええええ〜




状況を理解するのに時間がかかった
どうゆうこと
そんなこと一言も言うてなかっただろ
少年は胸にチクりとする痛みを覚えた
そして言い様のない虚無感に襲われた・・。
後からわかったことだが彼女のお父さんは事業に失敗して多額の借金を抱えていた。
毎日のように借金の返済に終われて追い詰められて遂に一家で夜逃げしたのだった…
この時に全てを悟った
あのバレンタインのチョコは彼女の別れの挨拶だったのだ
そして彼女の気持ちにも
その後、二人は二度と再会することはなかった
大人になった少年は空を見上げて願った
どこかでこの空を見ている彼女が幸せであることを・・
