意表を突く | PTD ~ Pilot To Dispatch ~

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ヒコーキオヤジのひとりごと
 空の話、ときどきタイのネタ…

 昨日はソロ(単独飛行)直前の
訓練生と軽く1時間。お互いの
時間が会わず、1ヶ月ほど開いて
しまった訓練だったが、このあたり
まで来ると、操作が体に馴染んで
きており、ブランクも感じさせない
技量になっていたので一安心。
 
 飛び始めのころは1ヶ月も開けたら
体が全部忘れて、始めからやり直し
なんてこともあるので、最初の10
時間ぐらい迄は、できれば最低でも
週1回は飛んで欲しいところだが、
自転車に乗るのと同じで、一旦できる
ようになるとなかなか忘れないので、
そうなったら多少開いても大丈夫だ。
 
 そんな訓練生に昨日は、敢えて
意表を突く緊急事態訓練を仕掛けた。
いつもは科目ごとに空中で簡単な
講評や助言をしたり、訓練生の判断
根拠を聞いたりしているのだが、
その議論中、説明をしている最中に
敢えて模擬エンジン故障を仕掛けた。
 
 普段なら私がやらないタイミングで
やらかしたので、訓練生は一瞬判断を
誤り、対応が数秒遅れた。一旦対応を
始めた後は満点だったのだが、もし
低空でことが起きた場合、この数秒は
命取りになる。
 
 機体の故障は、事前に予兆を感じる
こともあるが、大抵の場合、突然起こる。

 もちろん、その他の技量は問題なし
だったので、主席教官による単独飛行
審査に送る書類にはサインしたが、

  「まだまだだな…(笑)」

と、釘を刺すことも忘れない、意地悪な
教官、Kenさんである。もちろん、愛の
ある意地悪であることは訓練生も承知
しており、笑いながら

  「チウショウ!」

と、捨て台詞を残して帰って行った。

こんな絆が大好きな教官稼業。