街はイルミネーションに包まれる12月
私、飯野アイは来年28歳になる
高校生の頃から付き合っている彼とはもうすぐ11年目になる
恋人の、早坂リュウタに対して
正直、ときめくことが最近ない
最近というか、この数年間ない
友達は彼氏が出来るとノロケ話に花を咲かせ
その話だけでも、ときめいていることが十分に感じ取れる
結婚した友達も、夫のことは好きだ。と言う
この、「好き」という感情を
私はどこかに置き忘れてしまったのか
それとも捨ててしまったのか分からないけれど
さっぱり見当たらない
そして、良いのか悪いのか
それは私だけであって
彼は1年経とうが、3年経とうが、10年経とうが
変わらぬ愛情を私に注いでくれている
だから、私は時折、戸惑うのだ
そう、
彼の心の中では「飯野アイ」は
このイルミネーションのように常に輝いているのかもしれない
私の中では「早坂リュウタ」は
もはや空気のような存在でしかない
存在して当たり前。
と言えばどこかしらいいように聞こえるが
それが本音なのだ
私は、仕事帰りに
自分が食べるための苺シュークリームを
ひとつ買って帰ろうかなぁと考える
そう、これも彼ならば
自分の分だけー。なんてことはきっとしない
「アイちゃん、コレ」
そう言ってさりげなく渡してくれるのだ
私に何が欠けているのか
と考えるには膨大な課題で
ただ、周りのひとたちが
彼氏にときめくように私もそれを感じたい
だけど、どうしていいのかさえ
分からない
ときめくってなんだっけ?
すきってなんだっけ?
あいしてるってなんだっけ?
疑問符だけが頭の中を駆け巡る
彼はどうして
こんなにも愛情を常に注げるのだろうか
私は果たして
彼に愛情を注いでいるのだろうか
目が宙を見る
ふと、こんなことを思いついた
とりあえず今夜彼に会うことは約束してるから
苺のシュークリームをふたつ買っていくことにしてみよう
きっと彼は大喜びをしてくれるに違いない
その時の自分の感情に素直に委ねてみようか
彼の喜ぶ姿を想像しただけでちょっと笑みがこぼれた