なんとなく、
なんとなくなんだけどふと、外に出たくなった。
たまたま障子の隙間から見えた月が綺麗だからとか、冬めいた冷たい空気に触れてみたいとか、理由は何だっていい。
二人分の体温で暖まった褥、私を抱きかかえるように腰に回った腕から滑り出ると身じろぐ彼。目を覚ますかと思ったけれどそれは無く彼の瞼は閉じたままだった。
放られた単に手を通しそっと彼を見返れば随分と可愛い寝顔。いつも口端を上げて不敵に笑う彼しか知らない人が見たらきっと驚くことだろう。かく言う私だってそうだったんだもの。
強引で自分勝手、いいように私を振り回す彼を驚かせてみたい、そんな気持ちも手伝い部屋を後にした。
暗い廊下を進み甲板に上がると澄んだ月光が明るく降り注いでいる。見上げれば『ああ、だからこんなに明るいのか』と思わせる満月だった
船の縁に立つと海風が体を震わせる。羽織りを持ってくれは良かったと身をすくませた。下を覗き込めば恐ろしいほどの暗い海。だけどあの深い闇が懐かしいと感じる。昔、昔、人類が海から生まれたことを遺伝子が覚えてるからだろうか
例えば私が船から姿を消したら、例えば私がこの海に身を沈めたら彼は心配してくれる?寂しかってくれる?つまらない思考に苦笑いがもれた。彼がそんなこと思う訳ない。私が居なくなったら変わりの人はいくらでもいる。それこそ、綺麗な人、頭のいい人、共に戦える人。
『私なんかいない方がいいんじゃない?』
「なにくだらねェ事考えてんだァ」
『し、んすけ』
いつの間に来ていたんだろう。不機嫌さを表してる眉間の皺の深さに思わず後退った。それが気にいらなかったのかあっという間に距離を縮めた晋助は私の胸倉を強く掴んだ。
『く…るし、』
「お前ェは俺のモンだ、そうだろう?」
妖しく歪む唇がぶつかる。全てを飲み込むかのような口付け。荒々しいかと思えば絡む舌は優しくて、掴まれた腕は痛いのに頬を撫でる手は柔らかい。とても、とても
『しん…すけ、』
「お前ェはただ黙って俺の側に居りゃあいい」
『晋助…』
「それだけで、いい…」
あなたを想うと切なくて苦しい。だけど愛しくて…涙が出るほと愛しくて仕方ない。
『どこにも、行かないから』
きっとあなたもなんだと、寂しさに揺れていた隻眼を見つめたら、彼はただただ私を抱き締め続けていた。
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なんとなくなんだけどふと、外に出たくなった。
たまたま障子の隙間から見えた月が綺麗だからとか、冬めいた冷たい空気に触れてみたいとか、理由は何だっていい。
二人分の体温で暖まった褥、私を抱きかかえるように腰に回った腕から滑り出ると身じろぐ彼。目を覚ますかと思ったけれどそれは無く彼の瞼は閉じたままだった。
放られた単に手を通しそっと彼を見返れば随分と可愛い寝顔。いつも口端を上げて不敵に笑う彼しか知らない人が見たらきっと驚くことだろう。かく言う私だってそうだったんだもの。
強引で自分勝手、いいように私を振り回す彼を驚かせてみたい、そんな気持ちも手伝い部屋を後にした。
暗い廊下を進み甲板に上がると澄んだ月光が明るく降り注いでいる。見上げれば『ああ、だからこんなに明るいのか』と思わせる満月だった
船の縁に立つと海風が体を震わせる。羽織りを持ってくれは良かったと身をすくませた。下を覗き込めば恐ろしいほどの暗い海。だけどあの深い闇が懐かしいと感じる。昔、昔、人類が海から生まれたことを遺伝子が覚えてるからだろうか
例えば私が船から姿を消したら、例えば私がこの海に身を沈めたら彼は心配してくれる?寂しかってくれる?つまらない思考に苦笑いがもれた。彼がそんなこと思う訳ない。私が居なくなったら変わりの人はいくらでもいる。それこそ、綺麗な人、頭のいい人、共に戦える人。
『私なんかいない方がいいんじゃない?』
「なにくだらねェ事考えてんだァ」
『し、んすけ』
いつの間に来ていたんだろう。不機嫌さを表してる眉間の皺の深さに思わず後退った。それが気にいらなかったのかあっという間に距離を縮めた晋助は私の胸倉を強く掴んだ。
『く…るし、』
「お前ェは俺のモンだ、そうだろう?」
妖しく歪む唇がぶつかる。全てを飲み込むかのような口付け。荒々しいかと思えば絡む舌は優しくて、掴まれた腕は痛いのに頬を撫でる手は柔らかい。とても、とても
『しん…すけ、』
「お前ェはただ黙って俺の側に居りゃあいい」
『晋助…』
「それだけで、いい…」
あなたを想うと切なくて苦しい。だけど愛しくて…涙が出るほと愛しくて仕方ない。
『どこにも、行かないから』
きっとあなたもなんだと、寂しさに揺れていた隻眼を見つめたら、彼はただただ私を抱き締め続けていた。
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