「そんなに気になるなら行けばいいだろ、意気地なし」
「うっせえよ!!
日にちすら覚えてなかったお前に言われたくねえよ」
「うぐっ…痛いとこ突いてくるなよ。機嫌とるのにどれだけ
苦労したと思ってるんだ」
「顔だけがいい最低野郎だな」
「顔がいいのってのも結構疲れるぞ。大体、
そんな俺と生まれてこの方ずっとつるんでるお前には
言われたくないセリフだな。」
スマホの同じ画面をずっと眺めては時折ため息をつく
俺に腐れ縁のコイツはそういう。
俺だって好きでこんなことしてるわけじゃない。
昨日のあの出来事さえなければ今頃、用意してた
プレゼント片手に彼女の元へいっていただろう。
だが生憎、昨日勃発した喧嘩のせいでこうやって女々しく
スマホと睨めっこをしているわけだ。
メールの本文を書いては消す、これを繰り返したのはもう
何度目だろうか。
「ちょっと貸して」
半ば奪うように俺のスマホを取ると何やら操作し始める。
満足げな顔でタップすれば俺に感謝しろよ。
それだけ言うと俺との会話の時とはうって変わって
同性でも聞き惚れてしまいそうなイケメンボイスで
電話口の向こうの彼女へと囁いている。だが俺は
あいつの本性を知っているから天と地がひっくり返ろうが
そんなことはあり得ない。
今頃真顔で歯の浮くようなセリフを囁いているだろう
あいつの顔を思い浮かべて鳥肌を立てていると
握っていたスマホが振動し始める。
いきなりのことにびっくりして慌てて画面を開けば
俺を悩ませている原因からのメールだった。
急いで画面を開けば
『:無題
昨日はごめんね。
桜公園前に30分後に来て』
そう簡潔な文で書かれていた。素直な文体に幾らか
違和感も感じながらも仲直りできるチャンスだ、そう思い
急いで支度を始めた。
**
約束の10分前。少し早めに着きすぎてしまっただろうか。
入口近くのベンチに腰掛けうるさくなる心臓を叱咤する。
会ったら素直に謝るんだ、そう心に決めて。
「冬也(トウヤ)」
俺を呼ぶ声に決心をして振り向くと予想とは全く違う
顔で出迎えられ出鼻をくじかれる。
「何だよそのブサイク顔。大体なんだよあのメール、
謝り方ってもんなってねーよ」
「ハァ?何言ってるの?アンタこそ何が悪かったよ、
心こめて謝罪しなさいよ。なんなら土下座でもしたら?」
「遂に頭おかしくなったか?いつ俺がそんなメール送ったよ」
「頭おかしいのは冬也でしょ。メール送ったのすら
覚えてないわけ?」
何を隠そう俺達カップル、と呼んでもいいのかすら危うい
俺達は一応相思相愛なのだが極度の天邪鬼。
顔を合わせるたびに思ってることを素直に言えない。
俺達を知る知人曰く、
『どうして成立しているのか不可解でならない』
だそうだ。心理学専攻の奴に言わせるくらいだ、
それほど俺達はひどいんだろう。それを自覚しておきながら
お互いに直すことが出来ない。それでもこうやって続いている
のだから人間ってすごいな、そんな見当違いなことを思う。
そして今起こっている事態は何なのか。
そう考えてあることを思い出す。
「…おい、夏輝(ナツキ)。お前スマホ誰かに貸したか?」
「は?そんなこと……あったわ…」
そしてやっと気付く。
『『仕組まれた…』』
犯人の目星は大体付いているが。
ムカつくことこの上ないがこのチャンスを逃すわけには
いかない。俺の中の天邪鬼をどうにか抑えながら
頑張って口を開く。
「…な、夏輝。その、昨日は悪かった。」
そう言った俺の顔を見て驚きに目を瞠る彼女。
「…私こそ、ごめん」
お互い一言だけだが、随分勇気を振り絞ったと思う。
さあ、これで解決だ。心おきなく彼女を祝える。
…はずだった。
「夏輝、これやるよ。これで一つ年食ったな。おばさん」
「うっさいわよ、私より先に年食ったおじさん。」
そう言いながらも差し出したプレゼントを大事そうに
受け取る彼女に頬が緩む。可愛いな、そう思うが俺の口は
全く違うことを言ってのける。
「さっきのブサイクとはまた違った顔だな、嫁に貰う男は
よっぽどもの好きなんだな」
「そりゃそうでしょ、こんなもの好き滅多にいないわ。
もの好き同士仲良くしましょうね、バカ男」
そんなことを言いながらもどちらからともなく手をつなぐ
俺達はやっぱり奇跡のカップルかもしれない。
―――――――そんな俺達の姿を見ながら安堵なのか
呆れなのか分からない感情を渦巻かせる2人ももの好きだろう。