笹峯が2005年に女優、大見遥と創設した演劇ユニット「andMe」の第9回公演。
毎年、女性の核心に迫るテーマの芝居を上演し、女優のみが出演。「その胸-」は、命を産み出す助産院を舞台に、登場人物たちが、守りたいモノへの思いや葛藤を吐き出し、心の痛みを分け合う姿を泣き笑いで描く。
昨年、俳優の三浦誠己(38)と結婚し、1歳の長男を育てる笹峯は「出産を通し、命を産み出す重さ、今を生きている自分たちの人生の“生みの苦しみ”を感じてほしい」と熱っぽく語る。
母の格闘と命の誕生を見守る助産師、自然分娩にこだわりすぎる妊婦、取材にやってきた子供のいないフリーライターらそれぞれが乗り越えていく心の痛みは千差万別だ。助産院でかわされる女性たちの会話もリアルで、笹峯は「助産師さんのセリフは、実際に妊娠中の私が言われた言葉ばかり。芝居を書くたび、私は人生の“切り売り”をしているかも(笑)。いつ、離婚の物語が出てくるか心配」とジョークまじりに笑わせる。
90年代後半にTBS系「王様のブランチ」リポーターとして活躍したアイドル時代から想像できないほど、笹峯が持つ顔は多岐にわたる。女優に加え、演出家、脚本の執筆をしながら子育てをする生活は超ヘビーだが、昨年の公演は出産後わずか3カ月で挑んだ。
「昨年、出産した時に公演をやめていれば、おそらく今年の公演もなかったと思うし、来年の10回目に思いをはせることもできなかった。完全に“やめどき”を失いましたね」とあっけらかんと笑う。
自身で人生を開拓する姿はたくましく、「家族という守るモノができて本当に強くなったと思います。脚本、演出という裏方をやることで、相手の気持ちが以前よりも分かるようになったし、人として本当に勉強になっています」と笑顔。
「公演中は旦那さんが息子をみてくれたり、助けてくれるし、今後もいい作品を書いて、女優としてもがんばっていきたい」と気合十分だ。
演劇人、女性として、“生みの苦しみ”の末に待つ喜びを知る笹峯は、ますます進化を遂げるに違いない。
出演は津田真澄(青年座)、村田綾、もたい陽子、川原万季(散歩道楽)、菊池美里、内山ちひろ(インパラプレパラード)、大見遥。