【2010年文化部記者のベスト3】


(1)美しすぎる涙(AKB48、6月9日)


(2)美しすぎる背中(宇多田ヒカル、12月9日)


(3)美しすぎるベイビーショート(ICONIQ 、1月26日)


(1)平成22年6月9日に東京・JCBホールで行われたアイドルユニット「AB48」の「17thシングル選抜総選挙」。この選挙はシングルのメーン曲を歌う21人をファン投票で決めるというユニークな企画だったが、せっかく選ばれたメンバーが号泣していたのが印象に残った。


涙の理由の多くは順位に満足できなくて「悔しかった」から。その中でも、とくに胸を打たれたのが、21年の総選挙は1位で、22年は2位だった前田敦子の涙だった。前田は涙ぐみながら「今年はこの順位で頑張っていこうと思います。でも、もしリベンジができるのであれば、もっとたくさんの方に認めていただけるように頑張ります。AKB48を引っ張っていけるような存在になりたいと思います」と活躍を誓った。


目の前で、この宣言を聞いていた1位の大島優子も気を引き締めたのではないだろうか。多くのメンバーの気持ちを代弁するかのように、最後に総合プロデューサーの秋元康さんが「大島以外は全員、悔しいでしょう。この悔しいと思う気持ちが次のエネルギーになる」と全員を励ます言葉で締めくくった。


この選挙がAKB48の躍進に繋がったのは、その後の実績に表れている。市場調査会社「オリコン」が22年12月19日に発表した22年の音楽ソフト年間ランキングによると、シングルの売上枚数ランキングで1、2位を獲得したのはAKB48の「Beginner」(95万4千枚)と「ヘビーローテーション」(71万3千枚)。いずれもこの選挙後にリリースされた曲だった。


運動会で手をつないで一緒にゴールするなどといった偏向教育とは正反対の競争社会。その中で切磋琢磨(せっさたくま)するだけでなく、お互いに励ましあっている彼女たちが多くのファンの支持を集めているのは必然だといえるのかもしれない。


(2)平成22年12月9日に横浜アリーナで開催された宇多田ヒカルの無期限の音楽活動休止前のラストライブ。観客は1万4千人。中央には円形ステージが設置されており、そこに立つ宇多田は、観客の様子が「全部、見えるよ」と叫んだ。観客側からも宇多田のようすが全部、見えた。とくに注目を集めたのは、背中が見えるワンピースを着たときの後ろ姿。全方位から見られるのを意識した演出だと言っても過言ではないだろう。その覚悟が表れているような衣装だった。


前日(8日)のステージは動画サイト「ユーストリーム」で中継され、視聴者は約34万5千人に上ったが、コンサート中は、宇多田の背中を褒める書き込みが数多く見られた。


円形ステージの可能性を感じさせる舞台だった。


(3)平成22年1月26日のICONIQのインタビューでは、あまりに美しいベイビーショート(丸刈り)にみとれてしまった。


ICONIQが髪を切る決心をしたのは24歳で米ロサンゼルスに留学していたとき。現地で音楽のレッスンを受け、先生から「言葉は関係なく、表現だけで思いは伝わる」ということなどを学んだときに、知らないことはまだたくさんあると思い、未熟さを感じたという。同時に、環境が変わったのに自分自身は何も変わっていないような気がして、もやもやした気持ちになり、思い切って髪を切る決意をした。


記者もじつは高校時代にどこまで自分が髪の毛を短くできるかを試してみたくて、ベイビーショートに近い髪形に挑戦してみた経験はあるが、後悔した。当時の写真は封印している。この髪形が似合うのは一部の人に限られていると思う。


それだけにベイビーショートにして「ありのままを表現できているような気がして自信がもてるようになりました。気持ちも頭も軽くなりました」とほほ笑むICONIQがとてもまぶしく感じられた。


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