fragile
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vol.2

風さえも吹かないこの人工の街に、今夜も夜風は吹かない。
雨が降ると厄介で、地下の地面から霧状の水蒸気が沸いて、足元や、最下層の町は曇って辺りが見えなくなる。
そんなときを狙って、盗っ人が出る。
もとは同じ夢を抱いてやってきた仲間相手に、盗賊は無情にも空きを見計らい物品を盗む。
彼らに信頼関係は薄く、裏切りは毎日のことで、こころは荒み、食料も尽き、貧困の極みそのもののこの都市で、もう、家族愛すらも感じられずに過ごす人々の顔には、悲観すら忘れて、笑みさえ浮かんでいる。

日が満足に当たらないこの町で、花など何年前に見ただろう。

新羅の人間だけが`地上´に出られる。
新羅の人間が統治するこの都市のことを、新羅の人間らは、地上に出たら笑いぐさにし、「地獄」だと言い放つ。
そんな地獄を本当に地獄だと実感したのは、貧困にあえぎ、自らの身を新羅に売ろうとしている人間をこの目にしたときだった。
彼らは訛りのある拙い言葉で、子供たちのために、一ルクでもいいからお金をこの身と交換してくれと私の身体を掴んで叫んでいた。
彼らは取り押さえられ、駆け付けた新羅の研究員と話していると、カンパニーのなかに通された。
彼らを見たのはそれが最後だった。
私の白衣には、土と泥、それと有刺鉄線で傷ついた手や指先から出た、血だけが残っていた。
私はそれから聖母のメダイを離さず持つようになった。
数時間後の研究員の笑顔は脳裏から離れない。

胸元のチョーカーに通されたメダイは、どこか南国の海のように美しく青く輝いている。
たまに、世界各国にある新羅の支社での仕事を任命されたとき、数分の休憩時間に、いつか一瞥した、珊瑚の色が透き通った海の色をしていると、いつも思う。
ミッドガルの人間は、何人が海を覚えているだろう。
そして、忘れないひとこと。
「ミッドガルの外の世界を忘れたら、ミッドガルに住む、あのゴミのようになった最下層の人間と同じだ。」
私はそのとき、誰がそう言ったか見逃したことを後悔しながらも、何も出来ない自分への悔しさから、見逃したことを少し良いものと考えた自分が嫌になって、歯を軋ませたことを覚えている。

vol.1

雨音がしずくの音となって窓枠に落ちる。
私がそれを聞く。
いま、いまを刻む。
…時が重なる。
「いまがチャンスなのね。」
雨の日のミッドガルは警備が薄い。
脱出を計るミッドガルの監獄に生きる住人たちはこの日、何人がそれを夢見ているだろう。
そして、実行した若者の何人が私たちの遊びの実験動物と化してゆくだろう。
ミッドガルと呼ぶこの円形地下都市に、昔、私たち新羅カンパニーに雇われた幾千人ものひとが突如なだれ込んで来た。
それは、金に欲が眩んだ利己心のみで生きる人間の薄汚い姿そのものだった。未来を見ない人間。ひとがひとに利用される人間。私たちの目を見ていたら少しは変わっていたのに…?
新羅の人間はひそかにミッドガルを地球の中心地と呼ぶ。
何十年も変わらず時計だけを刻むだけの、あい生きた心地のしない、神化した社長への挨拶と敬礼のみで一日が終われる、この陰で死んだ都市を。
はじめから期待していないと唾を吐いて、帰れずに帰れないひとが身を寄せ合い、アバランチなどというレジスタンスが産まれた。
彼らはまだ若い。
私たちを変えてくれるだろうか…?
ひそかに、そう、願う。
「わたしだけ…?」
「なにがですか?」
背後から突如声が聞こえて私は恐れて振り返る。
「あぁ、いつもの挨拶ね。」


「はっ!!!」



「新羅に神あれ!!」



一日が終わる。
雨が…途切れる…。
天が、閉ざされる。
私が、帰らなくてはならなくなる。
独房によく似た、実験機器の列なるあの、地獄絵図のなかに。

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当blogは、オリジナルの FinalFantasy 7 とは全く関係の無い創作小説です。独自の登場人物が出演するなど、登場人物も多少違い、それに伴い、彼等各各の関係もまた違ったものとして描かれています。また、未成年には過激な内容が描写されており、読者さま方々各自で読む読まれないを取捨選択して頂けたらなによりです。その際、当作品をお読みになる時、オリジナルの FinalFantasy 7 をすべて忘れ去ってください。読者さま方が心行くまで愉しんでくださればなによりです。それでは、FinalFantasy 7 クリスタルクロニクル Worldへ!共に、時間を忘れて時空を飛び回りましょう!