柳田国男の歌仙をチェックしていたら「八半亭 Yahantei]というブログに当たり、そっくり「赤頭巾歌仙」を転載させていただいた。
たいへん興味がある。
このブログには、柳田自身の評釈も記載してあるが取りあえず歌仙本文のみを転載する。
連衆は、名前の通り昭和の偉大な国文学者、歌人であり、このような形で連句、歌仙が引き継がれていたのだ。
柳田が
「柳叟」、折口は言わずと知れた「釈迢空」である。
昭和16年8月、東北車中とある。
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柳田国男・折口信夫・土岐善麿の三吟

「赤頭巾の歌仙」

 

オ  発句   麦踏むや一人かぶらぬ赤頭巾       善麿 
   脇     こだまをかへす山咲(ワラ)ふ也     迢空
   第三   宗任の田打ち桜と見つれども       柳叟
   四     はにかみながら歌ふ今やう       善麿
   五    足柄の月に傘サさす木下闇        迢空
   折端    鰻いけたる走井の水          柳叟
ウ  折立   横顔に霙こぼるゝ朝ならん        善麿
   二     鐙(あぶみ)をふめばあかぎれにしむ   迢空
   三    しのぶれどトタンの壁の隙明(すきあか)り 柳叟
   四     一代ちょんが国へ帰らぬ        迢空
   五    うすものに忘れな草を染めさせて     善麿
   六     いくさ半ばに踊る短夜         迢空
   七    砂をいでゝ砂にいざよう胡地の月     柳叟
   八     太古の民も学問の富          善麿
   九    手のひらにすくもはたけば光る也     迢空
   十     春も漸う肥(コエ)の香ぞする     柳叟
  十一    外海へ幾重かさなる遠霞         善麿
  折端     ものゝ杭すら花と見ゆ藪        迢空
ナオ折立    袴着て山羊牽く姥も陸奥や        柳叟
   二     すこし疲れし民謡の旅         善麿
   三    むつごとも面白さうに話シして      迢空
   四     うたて鬼百合何をうなづく       柳叟
   五    この潟を埋めてしまふ秋風に       善麿
   六     更地を買へば相撲うるさき       迢空
   七    小息子の訛りめづらし新隣        柳叟
   八     もらつた本を先づ積んで置く      善麿
   九    文楽のいほりも夏の月さびて       迢空
   十     大渋団扇統制の外(ホカ)       柳叟   
  十一    講演のすめば朧の天守閣         善麿
  折端     御成(オナリ)の汽車とすれちがふ春  迢空
ナウ折立    いとほしの夫(ツマ)が手疵を窓越しに  柳叟
   二     朝髪梳けば匂ふ藁屑          善麿 
   三    追ふ牛の角文字ながらいまいまし     迢空
   四     長谷の下向に虻の道づれ        柳叟
   五    じゆんぐりにうつぎあぢさゐ花咲きて   迢空
  挙句     きりきり雀陽おもてに鳴く       善麿