昨年より「歌仙」に嵌り、歌仙の本を読んだり、仲間の呼びかけで連衆に
加わって少しづつ実作を楽しんでいる。

津山出身の詩人で俳人に安東次男という人がおられた。
芭蕉の俳諧連句の評釈や連句に関する評論も書いているほか、
自らも俳人として大岡信、石川淳、丸谷才一などと歌仙を巻いている。
安東が宗匠格であった様だ。
先日なくなった井上ひさしや野坂昭如、杉本秀太郎、結城昇治などが更に
加わり、いろんな組合せで昭和戦後の歌仙が盛んに行なわれていた。
単行本に残っている。

さて、その安東次男の句に好きな句があったので、「発句」に戴いて
「一人歌仙」を巻いてみる気になった。
しかし、表六句を作ってみて一人ではさっぱり展開が面白くない。
そこで、「裏」からは助っ人を頼むと、いかがであろうか俄然勢いがよくなる。
やはり、連句歌仙は確かに「座」の文芸であることを身をもって知る。
「捌き」は初めてのことなので、先ずは「半歌仙」(三十六歌仙の半分)で
収めることとした。

半歌仙 蜩(ひぐらし)の巻

発句 秋  蜩といふ名の裏山をいつも持つ   安東次男

脇        合宿終えし盆の月かな     笑禄
第三     松茸と肉を山ほど贈られて     同
四        名札黒々地元の名士       同
五      冬ざれの街頭に立つ総選挙     同
六        白手袋に結果の予感       同

一      小躍りをして妖精のさざめける  ひとみ
二        ピーターパンの飛ぶ空の色   笑禄
三 恋   許されぬ恋へ冒険爪を染め    ひとみ
四        畑の中を猫帰りくる       牛二
五      将軍の永久なる誉れ凱旋門    笑禄
六        玻璃に並木の映るギャラリー  ひとみ
七 月   冬月の壊れやすきは水の影    牛二
八        紙漉く音に仕上がり思ふ    ひとみ
九      四畳半丸あんどんに灯を入れて  笑禄
十        あくび出にけり春宵千金     牛二
十一 花  先生へ子等たばになる花吹雪   ひとみ
十二(挙句)  小鮒つりしは水温むころ     笑禄
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               平成二十二年三月九日 満尾