日本の食糧自給率は40%前後(家畜の飼料を含めた穀物自給率は28%)で

先進国では最悪であると、大方の情報として行き届いている。

 

自給率が低いと何が悪いか、なぜ高くなければならないのか、

自給率が目指す目標とはなんだろうか?・・・整理してみると、

 

 国民の食を守る (食の安全・安心、食料不足・飢餓)

 国内農業、農村、文化を保護振興する (農は国の基なり)

 輸入依存からの脱却 (世界の食糧危機に対応、食料武器論)


等に集約できようか。

 

しかるに、その根源の「食料自給率」がいい加減で、ミスリードしていると言う

論調があるので、私なりに整理してまとめてみようと思う。

 

まず、今、我々が通常「食料自給率」として把握しているのは

「カロリーベース総合食料自給率」と呼ばれるもので数式は以下のとおりである。

 

 国産で賄われたカロリー 

国民に供給されている全カロリー合計

(国内消費熱量+輸出熱量)/(国内生産熱量+輸入熱量輸出熱量) 

 

2003年の農水省発表データ:

日本:40%  英国:70% ドイツ:84% フランス:122% 米国:128%

カナダ:145% オランダ:58% スイス:49% 韓国46% 

 

さてこのカロリーベース総合食料自給率の落とし穴と言うのはなんだろう?

 

問題① 分母のカロリーは、輸入を含めた全カロリーであるから、

国内の農業生産が変らなくても、輸入が減ると自給率は上昇する。

輸入が途絶えると食糧難でも自給率は上がるという変なことになる。

つまり、輸入がゼロなら自給率は100%目標達成と言う珍事だ。

 

問題② 分子の計算でも、畜産物(牛乳や肉類、乳製品)は国産であっても

飼料は自給している部分のカロリーしか算入せず、穀物や野菜の生産に

不可欠な肥料は自給率には一切カウントされていないので、実質国産が

反映されてないのではないか?

国民が望む自給という概念に答えが出せるかどうかの指標であるべきだ。

 

問題③ 分母の全カロリーには、コンビニの廃棄弁当を代表する大量の食品

廃棄物もカウントされて自給率を低くしている。実質に食に供されてない

莫大な食料が自給率をさげているが、別次元の論理ではないか。

仮に、摂取カロリーを分母にして評価すれば、自給率はもっと高いはずだ。

 

  ちなみに、日本では、年間約1900万トンもの食品廃棄が発生しており、

  うち500万~900万トンは可食部分で、米の生産量が900万トンに

  匹敵していることをご存知だろうか。

  つまり、食品廃棄により年々、供給熱量と摂取熱量の差は広がり、

  表面上の自給率を下げていることになる。

 

問題④ 別の統計で、国民一人当たりの農産物輸入額(2004)は、

日本の324米ドルに対して、英国690ドル、ドイツ617ドル、米国214ドルと

英国、ドイツの半分なのに、日本の自給率が世界一低いのは一体どういう

仕掛けだろう。

 

   自給率計算では、海外向け国産農産物も国内供給としてカウントするので

英国、ドイツは輸入が多くても輸出があるため自給率が高いと推察できる。

これは、農産物の輸出努力の結果であって国内の「自給」というものを

高めるということの基準とは関係ない要素ではないか。

自給率の高い国は、輸入もしているが輸出もしているということは見えるし、

これは別の意味で大変重要な農業政策なのである。。

 

問題⑤ この自給率計算は、日本と韓国だけが自国で試算しているもので、

日本以外の外国の数字は全て農水省がFAOの統計から計算したものである。

その上、その計算根拠は公開していないので実態は分らないという。

農水省の数字マジックで自給率向上のための政策強調、関税率の確保、

農水予算獲得などのための操作ではないかという疑問がある。


問題⑥ 上記の自給率は、食料の安定供給を図るための指標と言うことだが、

古今東西飢饉にもっとも弱いのは農民であり、飢饉に最も強いのは金で

より広い地域から食料調達ができる都市民である。

輸入購買力があるほど自給率の分母は大きくなり自給率は下がる。

食料を安定供給する農民の努力とは関係ない(農民人口比率しか関係しない)

ところで自給率は動いていることになる。

 

問題⑦ と言いながら、一方で、同じ農水省は減反政策を施行し、補助金を出して

 米を作るなと言い水田を休耕、荒廃、林野化させて、上げるべき自給率の生産

 基盤を失わせている。

 

問題⑦ かつては、米と野菜は100%自給だといったものだが、最近は中国野菜

の輸入が盛んになり自給率は下がっていると思う。

カロリーベースでの野菜の全食糧供給の3%程度だそうだが、重量ベースでの

(と言っても水分が多いが)野菜の自給率は80%(中国産は10%)で、

この自給率の感覚のずれと言うことも入れての自給率40%なのだが・・・・・

 

こうした問題点を指摘できるが、現在農水省がいう「自給率」の向上を目指す

と言うカロリーベース総合食料自給率という指標は適切なのだろうか?

 

 

次回、これへの私の考えを述べたいと思う。