今朝の出勤途上、初めて実物の盲導犬を見た。、

若い視覚障害の娘とバス停でバスを待っていた。

朝の7時20分頃である。余程朝早く外出の用意をしたことだろう。

既に日差しはきつく朝日を浴びて、娘はハーネスを持って立ち、イエローの

ラブラドール・レトリバーは、娘の足元で伏せの姿勢で辺りをゆっくりと見回し

異変がないか警戒している。

思わず車を止めて、声をかけてやりたくなるほど健気な姿であった。

 

犬はこの暑いのに、チェック柄の洋服を着せられて、その上にはハーネスが

がっちり体をつつんでいる。涼しい顔はしているが、さぞかし暑いことだろう、

何で普通のペットのように洋服を着せているのだろうか?

余程、この娘が猫可愛がりしている・・・、犬が可哀相と思った。

 

しかし、あとで調べると公共の場に出る犬は、抜毛を床やカーペットなどに

残さないよう衣類をつけるのがルールで、娘はそれを守っていたのだ。

それと知ったとき、一瞬でも疑って申し訳なく、心の底で謝ったことだ。

そうすると、あのチェック柄が無性に可愛いものに思い出された。

 

盲導犬をはじめ、様々に人の役に立っている犬たちがいて、実に文句ひとつ

いわず嬉々として役割を果たしている姿を、テレビなどで見る。

 

子供の頃、荷車を主人と一緒に懸命になって引く犬を見たことがある。

炎天のなか、必死にゼーゼー言って引っ張っていた姿は忘れない。

今は、死語になったが、「使役犬」とでもいうものだったろう。

 

先日は、犬飼さんという牛飼いさん(冗談ではなくホントのこと)の家で生まれた

「牧羊犬」にふさわしいという「ボーダーコリー」の子犬を見た。

その子の親たちは、羊ならぬホルスタインを放牧に出す時、牛たちを上手に

リードしていて人間並みの仕事をする。放牧の時間になると、「早く仕事をさせろ!」

とは言わないが、実際、飼主を急かすのだ。

 

冒険家の植村直巳の著作で、エスキモー犬のことを詳しく書いていたことを

思い出す。犬は、どちらが主人かをはっきりさせるのが大切で、極寒の中で

足を血まみれにしながらでも、鞭を当て橇を引かせる、それが彼らの幸せで、

それを取り上げると意欲も健康さえも失う・・・、ということを書いていた。

ボーダーコリーも、普通のペットとして育てるのでなく、何か仕事を与えるような

飼い方をしてやるのが良いそうだ。

 

ワークドッグ、ワーキングドッグという言葉を聞いたことがある。

ざっと思い出すだけでこんな犬たちがいるであろう。

 

盲導犬、聴導犬、介助犬、セラピー犬、牧羊犬、そり犬、狩猟犬、警察犬、

災害救助犬、麻薬犬、水難救助犬、雪崩救助犬、軍用犬、水銀探知犬

トリュフを探しだす仕事をする犬(豚だったか)、ガイドドッグ、サーカス犬、

番犬・・・・。

 

盲導犬だけとらえても、潜在需要は8000人程度に対して、現在は1000頭

ほどしかいない。訓練を受けても40%程度しか盲導犬にはなれないそうだ。

そして訓練を受けても、2~10歳の8年間位しか役割を果たせる時間はない

そうである。多くの人のボランティアと行政の援助で成り立っているようだ。

 

犬をもっと、盲導犬に限らず人のために活用してもいいと思う。

それは、犬にとっても幸せなことなのである。

但し、条件がある。

 

犬を、経済動物のようにのみ使うのでなく、訓練をして仕事は仕事、仕事を

離れて主人として可愛がってやるときは可愛がってやる、そして、死の最期

まで面倒を見てやることが条件だ。

 

盲導犬も家に帰って、ハーネスをはずすと仕事がおわり、フツーの犬に戻り

飼主に甘えたりはしゃいだりするそうだ。ハーネスをつけると、パッと、仕事

モードに切り替わるのだそうだ。今朝見た姿だ。

なんと可愛い事か。

植村直巳も、鞭だけでなく、1頭づつ犬の首を捕まえては、手荒く撫でて可愛

がってやっていた姿は印象的だった。

 

何も文句を言わず、絶対に裏切らない犬という生き物、訓練の仕方によって

人の役に立ち慰められる。犬たちも仕事をすることが生き甲斐なのだ。

こんな犬たちを人間が裏切ってはならない。