とてもお世話になった方でした。
付き合い始めは5年程前で、その頃私は使いっ走りの様な仕事をしていました。
その方はその時期に役員になられて、私どもの生業とする設備投資に関しての最終決済をするお立場でした。
弊社の社長とはかなりやり合った様ですが、私には厳しくも、何故か暖かく接してくれて、遠い存在でありながら親しみを感じていました。
眼光は鋭く、だけど穏やかな物腰で
いつかこの方と対等に向き合って仕事がしたい、そう思わせるような方でした。
以前から持病を患っていらしたので、何度か入退院を繰り返しておられて、見舞いに行くと、もうダメだ、などと心にもないことを口にするので、その度に早く帰ってきて下さい、やることが山積みです、と本心で答えていました。
今回もすぐに戻って来てくれる、と信じていました。
訃報が届いた時、全く実感がありませんでした。いつものように仕事を片付け、家路についたのですが、帰る気がしなくて行きつけのBARに寄ることにしました。
いつもと同じ様に少し飲んで帰るつもりでしたが、おかわりし続けました。
日も変わり、他のお客さんが引き出した頃、なんとなく店の人にその方の事を話し出しました。
そして、店の人が別れの盃と出してくれたお酒を飲み干した瞬間、涙がこぼれ出し、止まりませんでした。必死で嗚咽を堪えました。
次の日の朝、鏡で自分の顔を見た時にまた涙がこぼれました。
今までこれほど別れを惜しんだことがありませんでした。
仕事を通じて自分の居場所が出来たということは、言い換えれば、自分の周りに掛け替えのない人たちが出来たということなんだ、と当たり前のことに気付きました。
心からご冥福をお祈り申し上げます。
平成26年4月12日