そして先輩にご自分の会社の事について聞いてみる事に


「先輩、どうして工場閉める事にしたんですか?先輩の技術者としての腕はバツグンなのに…仕事が無いって訳じゃないでしょう?」


「う~ん話すと長くなるんだよなぁえーまぁコロナ禍になる前はそんなに気にならなかったのだけど急速にデジタル化が進んだでしょ。給付金の支払いが遅い事が発端で。それと同じようにタイパって言葉が出てきただろ?あれがな…」


「うわ~何か解ってきましたわ~えーウチの会社と同じかもしれないショボーン


「そっちもか(笑)ただ事務職や会議、パソコンで出来る仕事はデジタル化して良いかもしれない。が、生産加工製造業にデジタル化は無理よ。どうしても人の手を使わないといけない。デジタル化という言葉が先行してしまうとウチみたいな手仕事は古臭くムダが多いように見えてしまうんだろうなぁ💦取引先の若い担当者といろいろあってな…」


「だっていくらパソコンで図面の寸法を打ち込んである程度の物が出来たとして現物がその通りじゃないでしょう?先輩のヤスリ仕上げがなかったら精度出ないじゃないですか!」


「まあ…そういう専門的な仕事をしている人は解ると思うけど。どうしてもひとつひとつ手でヤスリをかけてる所を見ると古臭くムダに見えてしまうんだろうなぁ。若い担当者にも言われたよ。何でそんなに時間かかるんですか?って。点当たりではなく面当たり。きちんと面で当てないと車のボディが歪んでしまったり凹凸が出来てしまうと言っても自動加工でも出来るんじゃないですか?と話が平行線でな」


「それはその担当者が不勉強なだけでしょう?自動加工で0コンマ何ミリの精度出ないじゃないですか!そこの上司には話したんですか?」


「何故お前が怒る(笑)言ったけど値段交渉の話も絡められちゃうとキョロキョロ他の業者さんが自動加工でやるみたいだからって話しになってな」


「だって先輩のヤスリ仕上げがあるから0コンマ何ミリって精度が出せるのに…手仕事だから多少の時間かかるのは当然じゃないですか!それを…」


「だからタイパって言葉なのよ。タイムパフォーマンス。この言葉が嫌いでなぁ💦物事に関して深掘りして理解しない。広く浅く見て解ったフリしてる事をスマートな言葉で誤魔化してるだけだ。この言葉に中身はないよ。俺はそう思う。」


「全く同意見です。ウチの会社も…」


その後先輩といろんな話をしました。


会社を閉める理由。それは…


「なあ。もう俺は疲れてしまったんだよ。今まで技術1本で仕事して食ってきたけど。時代の流れと共に必要性の無い技術になってしまったのかもしれない。そうなると自分自身を否定されてるみたいでな…」


素晴らしい技術を持ちながら理解されない現実。


先輩はほとほと疲れきったみたいでした…



続きます