二月からある県のカウンセリング協会で行われてきた《「心理学入門」ーユングとアドラー》という講座に出席してきました。ユングについては通り一遍にしか学んで来なかったので、この機会に学び直したいと思ったことと、アドラーについては外部でどのように語られているかということを知りたくて参加しました。

 

 一回二時間程度の講座を六回、ユングとアドラーに半分ずつかけて、という感じです。その中で興味深かったのは両者の比較で、ユングは人間の魂を《垂直》に奥深くまで探ろうとしていた人であるのに対して、アドラーは人と人との中に《水平》にそのあり方を模索してきた人である、ということでした。これはもちろん、すべてがそうであるというのではなく、そのあり方を概略して表現すると、という具合でしたが、非常に示唆深く感じられました。

 

 ユングが多く語られ始めたのはアメリカで、ベトナム戦争後心に大きな傷を負った若者たちが、魂の再生を求めて学び始めたのがきっかけのようです。戦争は多くの死傷者を生み出したしまう、それだけが問題ではなく、闘う兵士たちにものすごく大きな心の傷をもたらしました。ベトナム戦争後に映画などでもそうした心の傷に苦しむ兵士たちが描かれています。

 

 それに対してアドラーは盛んに《共同体感覚》ということを述べています。これはある種の団体や集団などに寄与する感覚というよりも、「人が全体の中で生きていることを実感する感覚」という表現です。ある種の集団の中で、全体の中でよりよく《建設的》に生きるのにはどうしたら良いのか、その中で貢献することでよりよい生を生きられる、という感覚です。

 

 そしてアドラーは、人は分割できない全体として把握されるべきで、劣等感の中で目的に向かって進む存在であると述べています。そうした人と人との中を《水平》に進むあり方を模索する彼の心理学は、今教育の世界で広く推し進められているというのです。アドラーは「すべての悩みは人間関係の悩みである」と申していますが、上手く人間関係が取り結べない現代の青少年にとって、大きな力を与えてくれるのがこの心理学の特徴であろうと思います。

 

 そうしたアドラー心理学の基本を学ぶことの出来る《アドラー心理学ベーシック・コース》が五月の13日から4回に渡って栃木市の國學院大學栃木学園の教育会館で、同心理学に造詣の深いヒューマンギルドの岩井俊憲先生や永藤かおる先生らによって行われます。以前にも述べてことですが、心理学の講座というとたいていが東京を中心とした大都市で開催されていて、地方に住んでいるとなかなか学ぶ機会に恵まれないのが事実です。地方に住んでいて、学ぶ機会を渇望していた方や、都会を離れてゆっったりとした自然の中で学びを深めたい方など、多くの人のご参加をお待ちしております。私も共催者として精一杯バックアップしていきますので、どうぞみなさん奮ってご参加ください。 

 

ヒューマンギルド HP  https://www.hgld.co.jp/