*このお話は⑯-1と連動してます。
もしまだ読んでいない方いましたら
⑯-1から読んでいただきたいです
(;´▽`A`
*******************************************************
土気色した顔のキュヒョンは事の成り行きを傍観するしかなかった。
ユジンがここまで強固な態度を示してるってことは
本当に怒ってるんだと経験で感じていた。
ユジンがダメだって言ったら本当にダメなんだと言うことを
久々に思い出して心底震えた。
だから、それを知ってるウニョクが必死だったってことも。
もうここにはいられない?
もうみんなといられない?
いや、気になってるのはそんなことじゃない。
シウォン先生と…
ヒョンともう個人的に会うってことはないってこと。
今キュヒョンを凍りつかせているのはそのことだけだった。
「お前本当に何言ってんだ?ここにいても仕方ないだと?」
羽交い絞めされたままのヒチョルが低くうなった。
ユジンはそのヒチョルを一瞥したが答えなかった。
「そうですよ。いくらなんでもそれは…
弟さんの、キュヒョンくんの意志はどうでもいいってことですか?」
ずっと成り行きを見守っていたイトゥクが口を開いた。
”ダメ。やめてよ。”そう言ってウニョクがイトゥクを制した。
ユジンはそのイトゥクの言葉に大きなため息をつき
すっと息を吸い込んだ。
「あなたたちは…何か大きな勘違いをしてないかしら。」
ユジンがそう言いながら部屋の中の一人一人の顔をみた。
「一体この騒ぎはなんなの?この事態はどういうことなのかしら?」
その場にいるみんなが顔を見合わせる。
「ここは遊技場でも場末のBarでもなんでもないはずよね。
神聖な職場であるはずよね?なのにこの騒ぎはなに?」
痛いところを突かれ、皆が黙り込んだ。
「まずひとつ。ダニエルさん…」
そう言ってダニエルの前で姿勢を正した。
それまで事の成り行きを傍観していたダニエルが
黙ってユジンを見つめ返す。
「ダニエルさま。このたびは当ホスピタルをご利用いただき
ありがとうございました。」
そう言って会釈をした。
「また、このたびは当ホスピタルの職員が多大なるご迷惑をおかけし
貴重な時間を浪費させてしまい申し訳ございません。
心からお詫び申し上げます。」
そういうと深々と頭を下げた。
ユジンがそのまま話を続けた。
「ダニエルさまのその貴重な時間の浪費に関する損害ですが
それ相応の代償を当ホスピタルで負担させていただく所存です。」
もう一度さらに深々と頭を下げる。
「それに伴いました、今後の対応とお詫びは改めてさせていただくこと
ご了承ください。取り急ぎ、まずは無礼を働きました
看護師にペナルティを課すことに致します。」
「ペナルティ?」
ダニエルが眉をひそめ聞き返した。
「はい。今回ダニエルさまを担当させていただきました
この二人の看護師。それぞれの処遇なのですが
2人とも一週間の出勤停止を通告いたします。
そして、代わりにここにいるキム看護師がお世話させていただきます。」
「えぇ?ぼ、僕?」
リョウクが思わず声を漏らすと”えぇ。よろしくお願いね。”と
ユジンが微笑んだ。
「ダニエルさまにご迷惑をおかけしたイ看護師に関しましては
出勤停止後他病棟への配属といたします。」
「え?うそ…」
ウニョクがびっくりしているのを気に留める風もなくユジンは続けた。
「そしてチョ看護師につきましては、このホスピタルからの移動を命じます。
このまま看護師を続けたいと思うでのあれば他施設での業務を命じます。
が、それを不服といたしましたら解雇する所存です。」
誰もが声にならない声を上げ、驚きを隠せなかった。
『ユジン!いったい何を…』
シウォンが思わずユジンに詰め寄ったが
ユジンは微動だにせず続けた。
「ここにおりますチョ看護師は、顧客であるダニエルさまへの
対応を命じられていたにも関わらず、自分に与えられた責務を
病院から抜け出すという形で放棄いたしました。
そのことに関したペナルティを課すのは当然です。」
「いや、私は大丈夫。このままその2人に…」
「いえ、それでは他の職員にも示しがつきません。」
ユジンはダニエルの言葉を遮りそう言った。
「…わよね」
キュヒョンはまだ今の状況が飲みこめなかった。
ユジンの言葉は絶対だ。
だから今話してることももうユジンの中では決まったことで
自分がいくら訴えても覆ると事はないだろう。
耳の奥でチーチーと血液が巡る音だけが聞こえる。
そうなんだ…
俺、もうここに居られないんだ…
みんなと一緒に居られないんだ…
キュヒョンは小さくパニックを起こしていた。
手足が痺れていたので多分過呼吸を起こしたんだと思った。
「キュヒョン。わかったわよね?」
ユジンは最後の最後でキュヒョンに念押しした。
「シウォン先生。先生にも何らかのペナルティを課すつもりです。」
そう言われてユジンをシウォンが厳しい顔で睨み返す。
『ペナルティ?あぁ、構わない好きにしてくれ。
だがキュヒョンは…ダメだ。好きにはさせない!』
シウォンが声を荒げた。
「好きにはさせない?あなたにそんな権利…あるのかしら。」
『権利?権利だと?』
「そう。あなた…もういいでしょ?」
『…もういい…だと?どういうことだ…』
「どうもこうも…もう終わりってこと。」
『終わり…だと?』
「そうよ。終わり。
キュヒョンはあなたを見限ったのよ。
でもそのきっかけは…
お分かりのはずよね?チェさん。」
『だからそれは…』
「まぁ、いいんじゃない?
おかげでそちらにいらっしゃるダニエルさんと…」
ユジンが言葉を止め肩を竦めクスリと笑って見せた。
『俺とダニエルがなんだって?』
「そうだ、ユジン…冗談がキツイようだが?」
成り行きを黙ってみていたダニエルも驚く。
「冗談?私がこんなこと冗談で言ってると思うの?」
ユジンの気迫にダニエルもそれ以上何も言わなかった。
「弟はもうあなたのところに戻る気はないそうよ。
ねぇ、キュヒョン。その覚悟があって出てきたのよね?」
ビクリと肩を揺らしキュヒョンが顔を上げた。
ユジンを、ダニエルを、そしてシウォンをで順番に見た。
そしてこぶしを握り占めた。
「ほらね。」ユジンは肩を竦めた。
「もう弟の事は気になさらずに…
おふたりで楽しまれたらいかがかしら?」
『…どういうことだ?』
シウォンの顎に力が入る。
「あら、何か気に障ったかしら?
私はただ…ほら、お二人で…こう…仲良く…」
『ユジン。言っていいことと悪いことが…』
シウォンがユジンを睨みつけた。
しかしユジンは全く怯まなかった。
「そうよね。シウォン先生。
言っていいことと悪いことがあるのよね。
良かったそれをわかっていただいてて。」
ユジンは一呼吸おいて息を整えた。
「だったらあなたが弟に言ったことはどうなのかしら?
あなたはいわれないことで弟を愚弄した。
…私は絶対許さない。」
ユジンはシウォンに向かってきっぱりと言い放った。
『うっ…』
とひとうなりしたままシウォンは次の言葉が出てこなかった。
その姿を満足そうに眺め
「さぁ、キュヒョン行くわよ。」
ユジンがキュヒョンにそう厳命した。
思考が完璧に停止しているキュヒョンにユジンが声を掛けた。
キュヒョンは促がされるまま出口に向かうしかなかった。
『キュヒョン!』
シウォンの声が遠くで聞こえた気がした。
VIP室のドアの側にはいつの間にか執事のシンドンが待っていた。
「キュヒョンさん。さぁ行きましょう。」
そう言ってシンドンは肩に手を置いた。
その時だった。
何かに弾かれたようにキュヒョンが踵を返し
部屋の奥に…正確には、シウォンに向かって走り出した。
そして驚いて目をまん丸くしているシウォンの腕を掴み、
「ヒョン!」と呼んだ。
『キュヒョナ…』シウォンがキュヒョンの名を呼んだ。
「シッ!黙っててよ。」
そう言ってダニエルに向き直ると
「あの…この人あげませんから。こ、この人は俺のだから!」
そう言い放ってペコリと頭を下げシウォンの腕を引っ張った。
そしてユジンに向かって
「ごめん。俺、やっぱりこの人じゃなきゃいやなんだ!」
そう早口に告げるとシウォンの手を取り、
VIPルームから飛び出したのだった。
******************************************
どうしても一気にアプしたいということで
①と②で分けました。
お付き合いありがとうございます。
シリアスモードはここまで。
(= ̄∇ ̄=) ニィ